クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

化石燃料から作る水素は意外にバカにできない池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2021年09月20日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

続々と始まっている実証実験

 しかし、そこで使用する水素はどうやって作るのか? それに対し、トヨタはまたもやお金や技術を出してさまざまな取り組みをやっている。京浜地区の風力発電由来のハマウイング(燃料電池は終わったのか?)もあれば、浪江町の太陽光由来の福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)、さらに九州では地熱による地産地消型の小規模地熱発電ベースの開発も進めている(記事:バッテリーEV以外の選択肢)。

 これらはどれも実証実験であり、いずれ商用化するために運用しながら、オンザジョブで研究開発を進めているものだ。もう少し踏み込んで説明すれば人口40万都市(国内地方都市の平均的モデル)の補完的エネルギーとして、例えば災害時にエッセンシャルワークに電力を回すためにどうするかという実験だ。災害時のためだけにインフラ整備はできないので、そういう時に役立てる技術として、普段から回しておかないと具合が悪い。ではそれにはどこにどれだけの設備を持ち、どの程度のコストでどのくらいの量の水素を消費するインフラデザインにすべきか、それを求めるための実証実験である。

 さて、新エネルギーに求められるのは、やはり環境負荷だ。そうでなければ、化石系エネルギーで十分なインフラができている。そのため、これまでは環境負荷が極めて低く、カーボンニュートラルというより、むしろゼロカーボンを志向してきたわけだ。その代わりまだまだかなり背伸びした基礎的段階にあった。

 しかし、そうやって理想の形を求めていくと、それ以外のアプローチが存在し得ることが徐々に見えてきた。それが意外や意外、褐炭ベースの水素というソリューションだったのである。

 これまで、褐炭ベースの水素がどうも敬遠されてきたのは、水素への変換時にCO2が発生してしまうことが大きかった。環境負荷が高いなら石油で構わないということになる。それを解決する方法として期待され続けてきたのが二酸化炭素回収技術であるCCSである。以下資源エネルギー庁のwebサイトから説明文を抜き出す。

 「CCS」とは、「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれます。発電所や化学工場などから排出されたCO2を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するというものです。

 実はこれが過去の資源エネルギー庁のレポートなどでは、コスト的にかなり難しいと表現されていたので、筆者もそのように理解していた。ところが、9月14日に、神戸にある川崎重工の本社まで取材に赴いて、この常識がひっくり返された。

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