長谷川: 第一想起になれるのは一握りですよね。第一想起になれなかったらどういう戦い方をすればいいでしょうか?
富永: 第一想起に対するチャレンジャーになるというオプションがあります。コカ・コーラに対するペプシ、トヨタに対するに昔の日産、王道に対する若さやチャレンジングスピリッツ、営業に対する技術力とか、対立軸を作って常に下から攻撃する。
この戦略は、上からあまりやり返されないという利点があるんです。やり返すといじめみたいに見えてしまうでしょう。やり返されずにある程度のシェアを取れるところまでいけるかもしれない、という戦略なんです。
長谷川: チャレンジャーになることすらできない手前のブランドもあるじゃないですか。
富永: その場合は、カテゴリーの中で小さな自分の城を作り、そのサブカテゴリーの中で勝負するという手があります。
アサヒスーパードライが出たばかりの頃がそうなんです。キリンラガービールに絶対敵わなかったから、ドライビールというカテゴリーを作り、この中で一番になると。
当時、ドライビールはマイナーだったので、他のメーカーはあまり力を入れていなかった。でも、だんだん支持されるようになり、他のメーカーがドライビールに参入した頃には、もうドライといえばアサヒスーパードライというふうになっていた。そういうこともできると思います。
筆者: 富永さんは、小売り業からAIの会社へ転職されましたが、これまでの経験はどのように生きていますか?
富永: マーケティングにおいて大切なことは、業界を超えて共通しています。人間理解をベースとしたブランド設計や、顧客とのコミュニケーションなどです。
さらにこれまでの経験から、「プロジェクトがこういう状況のときは、こういうボールを投げると化学反応が起きるだろう」といったストックはさまざまあるので、スタートアップに来て役立っていると思います。
マーケティングでは、しゃにむに理論を援用するのではなく、いかに自由自在に応用できるかが勝負です。企業の分野は変わっていますが、見てきた景色、踏んできた場数を、今も生かせていると思います。
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