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賛否両論の「BALMUDA Phone」、否定的意見は“想定内”家電メーカー進化論(2/8 ページ)

» 2021年11月26日 07時00分 公開

アップル製品の周辺機器からスタートしたバルミューダ

 BALMUDA Phoneの発表会で寺尾氏は、たっぷりと時間を取って会社のこれまでについて紹介した。創業は03年。寺尾氏一人での船出だった。最初に作ったのはMacBookを置く、アルミとステンレスのスタンド「X-Base」だ。寺尾氏自らデザインを起こし、設計したという。そしてバルミューダが有名になったのは、10年に発売した扇風機「GreenFan」がきっかけだ。発表会では、当時を以下のように語った。

 「09年、バルミューダは倒産の危機に瀕していました。売り上げが4500万円で赤字が1400万円。銀行から3000万円の借り入れもありました。リーマン・ショックの煽りを受けて受注が完全にストップしていました。どうせ倒産するなら、前を向いて倒れようと、それまでにない製品として開発したのが『GreenFan』です」(寺尾氏)

 扇風機では1万円以下が当たり前だった時代、高価なDCモーターを積んだ3万円の扇風機は異質な存在だった。寺尾氏自身、エアコンの風が苦手で優しく送風できる扇風機が欲しいと考えていた。自分が欲しいという思いに端を発した無謀な開発だった。

 しかし翌年、東日本大震災が発生し、節電が叫ばれたことで、この優しく自然な送風のできる扇風機が大ヒットし、バルミューダは息を吹き返した。

 続いて季節商品ではなく、通年で販売できる製品を模索した中で見つけたのがトースターだった。扇風機と同じように1万円以下の製品がたくさんある中で、15年に発売された2万円台のトースターは、出来上がるトーストの美味しさから爆発的にヒット。

 トースターはバルミューダを代表する商品となり、多くの家電メーカーが2万円台のトースターを開発するきっかけにもなった。

バルミューダを一躍に有名にした大ヒット商品「BALMUDA The Toaster」。2万円台の高級トースター市場を生み出した(写真は新色のグレー)

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