クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

2021年乗って良かったクルマ池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/8 ページ)

» 2021年12月13日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 ただし、水素インフラはまだまだだ。補充拠点が足りないし、何より営業時間が壊滅的だ。たいていは夕方閉店である。時間までにたどり付けなければ大変なことになる。BEVも現実的にはまだ不便だが、その意味ではそれより劣る。

 例えばBEVは旅行の計画を立てるとき、宿や食事する店が自由に選べない。実質的には、充電器がある場所から選ばなくてはならないし、距離がギリギリなら充電器の動作確認と予約をしておかないと怖い。しかも予約をさせてくれるかどうかは施設次第だ。宿や飯屋以外では、経路での充電で、あてにしていた充電器が故障していることもある。充電スタンドアプリなどで分かるケースもあるが、行ってみるまで分からないことも多い。そのあたりは赤裸々な話がアプリのユーザーコメントでたくさん読める。

 水素の場合、宿や飯屋に充填(じゅうてん)機があることは最初からあり得ないので、付近の水素ステーションに寄り道して補充するしかない。場合によっては往復で50キロくらい遠回りをする必要があるだろう。それで足りないような場所にはFCEVで出かけてはいけない。実際、筆者はたまたま行った先の充填機が整備中で使えなかったことがある。

 ただしMIRAIの場合、良いところも多少ある。補充できるステーションが少ない代わりに、航続距離が650キロ以上ある。普通のユーザーなら400キロ程度走ったら、そろそろ充填しておこうと思えることだ。これだと少なく見ても200キロ程度は航続距離を残していることになるので、何かあってもリカバーが効く。

 航続距離320キロ程度のEV(日産リーフの40kWhモデル相当)だと、かなり用心深い人でも200キロくらいは走ってから充電するだろうから、リカバーできる範囲が限られる。残り航続距離が50キロ以下で、もし狙っていた高速充電器が故障していたとしたら、リカバー範囲に同等の高速充電器があるかどうかはだいぶ微妙だ。充電速度を問わないなら何とかなるだろうが、その場合、30分充電での走行距離はかなり厳しいことなって、その先の充電ペースを頻繁にするか、ほかに待っているクルマがいなければ「おかわり充電」で1時間を覚悟することになる。いずれにしても、先の予定は変更を余儀なくされる。

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