クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

2021年乗って良かったクルマ池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/8 ページ)

» 2021年12月13日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

トヨタ MIRAI

 今更な説明だが、MIRAIはFCEV(燃料電池車)である。初代と比べて、クルマの出来は劇的に向上した。水素供給の問題がないなら、諸手を挙げて推薦したいくらい出来が良い(記事参照)。

 リニアリティや低速トルクといったBEV(バッテリー電気自動車)の持つ良さを全て持った上に、BEV比で車両重要が圧倒的に軽い。BEVよりシステム重量の軽いICE(内燃エンジン)車との比較ですら、例えば動力的に同等であるV6の3.6リッターあたりのガソリンパワートレインと比べても軽いのだ。トランスミッションがないことが大きい。

 タンクでも有利だ。750キロの航続距離をベースに、エネルギー貯蔵能力をそろえて重量を見れば、バッテリーなら確実に重量が300キロオーバーになるのに対して、満タンの燃料はたった5.6キロ。カーボン製のタンクも軽いので、〒マーク型に配置される3本と燃料を合わせても20キロ程度だ。

 カムリのタンク容量が50リッターだから中身のガソリンだけで約37キロある。タンク重量は分からないが、それを合わせれば50キロでは済まないのは間違い無い。もっともこっちは航続距離が1000キロを超える。つまりMIRAIのシステムは動力性能に比して、現在最も軽い。

MIRAIの燃料電池ユニット

 しかも、運転感は群を抜いて良い。特にクルマ屋が作ったものらしく、ピーク値特化型ではなく、ハンドルもアクセルもブレーキも過渡領域の作り込みがよくできている。挙動の麗しさを堪能できる価値がそこにある。

 4月に追加されたハンズフリー可能なADAS(先進運転支援システム)のアドバンスドドライブの出来も、かなり未来的で、高速道路の長距離運転支援システムとしては最先端にある。どこのどのシステムでもそうだがまだ完璧とはいえないが、現時点でいえば最も自動運転に近づいたシステムといえるだろう。

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