首都圏の鉄道で“似たような車両”が増えている「なるほど」な事情共通化がもたらす意味とは(1/4 ページ)

» 2021年12月14日 08時00分 公開
[小林拓矢ITmedia]

 11月24〜26日、幕張メッセで「鉄道技術展」が行われていた。鉄道に関するさまざまな技術を提供する企業が多く出展しており、未来の鉄道システムの見本市といった印象を感じさせられた。

 鉄道は鉄道事業者に限らず、さまざまな関連事業によって成り立っている。その中で、車両メーカーは大きな存在である。

 従来、車両メーカーは鉄道事業者の考えた仕様のものを製作していればよかったものの、近年は鉄道車両の製作にも、コスト削減が求められるようになった。

 一方で、国鉄からJRになり車両の種類が増え、また私鉄などもよく新車を登場させるようになると、そのぶんの開発費用が問題視されるようになった。

 そんな中で進んだのが、鉄道車両メーカー主導で制作する共通規格の車両だ。「最近、首都圏では似たような感じの車両が増えている」と思ったことはないだろうか。

総合車両製作所が提案する「sustina(サスティナ)」

 首都圏でもっとも大きな路線網を持つJR東日本だけではなく、東急電鉄や相模鉄道、京王電鉄、都営地下鉄、意外なことにオリジナリティを重視する京急電鉄でも、似たような規格の車両が増えている。塗色も違う、内装も違う、だけどなんだか似ている。しかし違う。

 それは首都圏だけではない。しなの鉄道や静岡鉄道でもなんだか東京の電車と似た雰囲気の車両が走っているなあ、と思われた人もいるかもしれない。

 タイのバンコクの都市鉄道でも、同じような車両を見ることができる。都市鉄道パープルラインン(正式名称 チャローン・ラチャタム線)には、同様の技術を使用した車両が見られる。フィリピンの南北通勤鉄道にも導入されている。

 共通しているキーワードは、「sustina」。総合車両製作所が提供する、オールステンレス車両のブランドである。ある服のブランドが、さまざまな服を作っていても、どこか共通の雰囲気が感じさせられるのと似ているというと、分かりやすいのではないだろうか。

「鉄道技術展」にて。総合車両製作所のブースには多くの人が押し寄せていた

 「sustina」とは、ステンレス鋼材を示す「SUS」、美観について、維持しやすいという意味の「sustainable」に、地球を救う女神を示す語尾「-ina」を組み合わせたものである。

 JR東日本を中心として東急などの多くの車両は、このブランドの車両となっており、車内にも表示されている。

 「sustina」とは、どんな車両システムなのか?

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