首都圏の鉄道で“似たような車両”が増えている「なるほど」な事情共通化がもたらす意味とは(2/4 ページ)

» 2021年12月14日 08時00分 公開
[小林拓矢ITmedia]

共通のプラットフォームと、各事業者に合わせたカスタマイズ

 まず「sustina」は、共通のプラットフォームを提供するブランドとして存在している。

 先ほども述べたように、鉄道事業者ごとに独自の車両を少量多品種生産していても、コスト面での課題がある。基本的な部分を共通化できれば、車両開発や製造に関する多くのプロセスを削減し、初期費用を削減、メンテナンスを含む維持管理費の削減も可能だ。そこで持続可能性をテーマに推進してきたのが、「sustina」のプラットフォームである。

 車両の外板はフルフラットにし、でこぼこがないように溶接、フルラッピングや全塗装をする場合でも美しく仕上がるようになっている。18m車3扉(全長18m、片側3扉の車両)、20m車3扉、20m車4扉とそれぞれの車両にあわせた規格ができている。運転台などの業務設備や、走るのに欠かせない台車も共通化している。

 一方で、各鉄道事業者でデザインのオリジナリティは高めなければならない。快適性も、追求する必要がある。そこは鉄道事業者のこだわりを示すべきところだ。外観のデザインだけではなく、車内のデザインも含めて、鉄道事業者が守ってきたものは大切に維持する必要がある。

 都営地下鉄浅草線5500形、京王電鉄5000系、相模鉄道12000系。それぞれが独自の存在感を示している車両だ。5500形は歌舞伎の隈取りをアレンジ、5000系は「京王ライナー」のためのロング・クロス転換車両、12000系は相鉄のブランドカラー「ヨコハマネイビーブルー」。同じようには見えない、かっこいい車両たちだ。

「sustina」のプラットフォームで作られた車両一例(出典:総合車両製作所のホームページより)

 しかし、これらは共通のプラットフォームに乗っている。外装だけではなく、内装もそれぞれのコンセプトにあわせたものとなっており、「沿線らしさ」をイメージさせるものとなっている。

 今後、「sustina」は、シンプルさを追求した「NEW sustina BASIC」という共通設計を拡大した初期費用の低い車両を展開しようとしている。

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