世界初! 道路も線路も走る「DMV」が登場して、何が変わろうとしているのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/8 ページ)

» 2022年01月07日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 2021年12月25日、徳島県と高知県を結ぶ「阿佐海岸鉄道」でDMVの運行が始まった。

 DMVは「デュアル・モード・ビークル」の略称だ。鉄道車輪とゴムタイヤの両方を装備して、鉄道と道路を直通できる。この仕組みは保線用車両の「軌陸車」とほぼ同じだ。ただし旅客用としては世界で初めて実用化した。鉄道では列車として、道路ではバスとして走る。

 世界唯一のユニークな乗り物として、国内外から多くの鉄道ファンや乗りもの好きが訪れるだろう。ただし感染防止対策が講じられている間は、訪日観光客はもう少し待たなくてはいけない。国内鉄道ファン、バスファンにとっては今のうちに「乗り初め」しておきたいものだ。

 実際に乗ってみたところ、かなりおもしろい乗りものだった。マイクロバスの車体はちょっと窮屈ではあるけれど、道路を走っていたバスがそのまま線路を走るという体験は痛快だ。

 阿佐海岸鉄道は高架とトンネルが大半だから、市街地との景色の変化が大きい。だから走行モードが変わると景色も変わる。マイクロバスに乗ったまま高架橋に入りトンネルを通り抜ける。鉄道モードで走る時は2軸のディーゼルカーだから、ガッタン、ガッタンと独特のリズムになる。新しい乗り物だけれど、レールの響きは小型のレールバスのようで懐かしい。その意外性も楽しかった。

 この新しい乗り物が、沿線地域にとって新しいアトラクションになる。日常生活の手段になるかどうかは先の話で、ひとまずは観光地の活性化に期待だ。ただし、観光地になるために、まだまだやるべきこともたくさんあると感じた。

第1便の出発式
出発式は阿波海南文化村で開催された。開業記念式典とテープカットにはJR北海道の島田修社長、JR四国の西牧世博氏も列席。ちなみに風船は自然に還元できる素材とのこと
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