沖縄開発庁(当時)で沖縄海洋博を担当した作家、堺屋太一氏の著書『人を呼ぶ法則』によると、観光開発には6つの要素が必要という。「歴史」「フィクション」「リズム&テイスト」「ガール&ギャンブル」「ショッピング(買い物)」「サイトシーイング(風景)」。ただし、各要素をまんべんなく手がけると凡庸な観光地になる。このうち3つを重点的に整備せよ、と紹介していた。
DMV沿線には何があるか。「歴史」はDMVの起点、阿波海南文化村に小さな博物館がある。しかし、大河ドラマになるような歴史的事件はなさそうだ。明治維新の志士たちもこの沿岸を通っていないと思われる。「フィクション」はいわゆるロケ地訪問、アニメの聖地巡礼だけど、これもない。ただしこれから作れる。希望はある。
「ガール&ギャンブル」もない。これは不要かも。堺屋太一にアドバイスした人物が米国の観光プロデューサーだったから挙がった要素だ。70年の話だから現代にはそぐわない。日本にもフラダンスで成功した観光地もあるし、阿波踊り会館では麗しい踊りを通年見せてくれる。しかしDMV沿線で同じ方法は難しいだろう。
残るは「ショッピング」「サイトシーイング」だ。DMVはここで勝負してほしい。「サイトシーイング」は間違いなく良い景色だ。海上も海中も。そしてDMVモードチェンジも世界でただひとつの景色だ。ショッピングとしては、おみやげ、グッズのネタを探そう。鉄道関連グッズは当時の阿佐海岸鉄道も扱っていた。全国に先例はたくさんある。ほかになにか「ここにしかないもの」がほしい。
おみやげとしてはポンカン、柚子などの柑橘類が特産だ。とてもおいしいけれど、ほかの産地もある。競争力を付けるために、DMVにちなんだブランドがほしい。
海部町に「宝来堂」という老舗菓子店がある。「ういろう」が名物で、リゾートホテルの売店などでも売っている。さわやかな甘さでとてもおいしい。あるとき、オンラインミーティングで、その宝来堂のご主人が「DMV組み立てもなか」を披露した。モナカの皮がDMVの車体になっていて、タイヤ用の筒状の皮もある。餡は別添の袋入り。この状態で持ち帰れば、自分で組み立てて楽しいし、いつでも皮がパリパリの香ばしいモナカを味わえる。
しかし、組み立てモナカなら秩父にもあった。私は生意気にもダメ出しをした。「これじゃ単なるバスもなか。DMVらしくしない」するとしばらくして改良版が送られてきた。車輪半分のモナカの皮が追加されていた。これを前輪の前、ボンネット下に取り付ければ、なるほど、DMVの鉄道モードだ。これは日本でここしか作れない。DMVが走る町しか売れない。唯一無二の良いおみやげになった。こういう発想と実行力が観光地を活発にすると思う。
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