世界初! 道路も線路も走る「DMV」が登場して、何が変わろうとしているのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/8 ページ)

» 2022年01月07日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 振り返ると、私が06年に阿佐海岸鉄道に乗ったときも、高知側から土佐くろしお鉄道に乗り、そのままバスで室戸岬を巡って、甲浦から阿佐海岸鉄道に乗って海部でJR牟岐線に乗り継いだ。阿佐海岸鉄道の車窓から見た海は美しい。

列車モードの車窓に海が広がる

 しかし、沿線で泊まる、食べる、観光するということはなくスルーした。効率の良い日程を組むためにも、運行本数の少ない阿佐海岸鉄道は、早く通過したい。当時の私のようにカネも暇もない乗り鉄はそういう行動パターンになりがちだ。なんとか、乗り鉄の足をとどめたい。

 DMVをきっかけとした観光活性化の戦略としては2方面ある。

  1. DMV目当ての鉄道ファン、バスファンを「ファン消費」に結びつける
  2. 観光客にDMVを見物してもらい、そのほかの観光地も周遊してもらう

 大前提として、鉄道ファンはプロモーションなしでも興味があるからやってくる。いままでは片道列車で通り過ぎていたけれど、DMVは乗るだけではない。降りてモードチェンジを見て楽しむだろう。筆者から提案するまでもなく「モードチェンジをしっかり見物できる場所を作りましょう。乗ってしまったらモードチェンジの様子は見られないから」という意見が多かった。

甲浦(かんのうら)駅、旧鉄道駅がモードインターチェンジになった。乗降はループ勾配の下の停留所に変更された
甲浦駅には高架から試乗へのループ勾配が新設された

 乗ってる人を降ろせば、そのぶん現地滞在時間を増やせる。食事や土産品を買ってもらう機会を増やせる。「せめてジュースの販売機を置くだけでもいいから、何か売りましょう」。

 すぐにはかなわないと思うけれども、ビジネスホテルなど手頃な宿泊設備がほしい。撮り鉄は早朝の風景も夕景も夜景も撮る。だから現地宿泊場所が必要になる。オススメ撮影ポイントの地図もほしい。「あさチェン推進会議」メンバーと現地を歩いて適所を探した。阿佐海岸鉄道は定期的にフォトコンテストを開催しているようだから、いずれパンフレットや四季の写真でカレンダーが作られるだろう。

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