全員に恩恵のある「駅のバリアフリー」、都市と地方でこんなに違う杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)

» 2022年01月21日 14時46分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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 鉄道会社にとって、体の不自由な人はそうではない人よりコストがかかる。しかし運賃は同額だ。そうかといって車椅子利用者に車椅子加算運賃、白杖利用者に白杖運賃を設定すれば差別である。

 体の不自由な人に限らず、売り上げと費用を考えれば、こども運賃も女性専用車両もコストに釣り合わない。こどもだって大人と同じ空間を占有する。違いはせいぜい体重くらいだ。収入の有無をいうなら、収入のない大人もいるし、子役など特技で稼ぐ子どももいる。それなのに、世間では「こども半額」が当たり前になっている。

 女性専用車両は存在自体に賛否両論あるけれども、その論議は別の機会にする。女性専用車両が空いていて、一般車両が混雑しているなら、やはり女性専用車両の乗客はコスト比率の高い乗客といえる。

 それでは「こども半額」「女性専用車両」の根拠は何かといえば「やさしさ」だ。企業が自らコストアップを許容する社会通念は「やさしさ」である。フィリップ・マーロウの言葉を借りれば「企業はタフでなければ生きていけない。優しくなければ生きる資格はない」。

 しかし、やさしさはコストだ。タフにも限界がある。身も蓋(ふた)もない話だけれど、だからこそ公的支援は必要になってくる。

 民間企業の「やさしさ」の負担に限界があるなら、国がやさしさを支援する。これが交通政策基本法の概念だ。

国は、高齢者、障害者、妊産婦そのほかの者で日常生活又は社会生活に体の機能上の制限を受けるもの及び乳幼児を同伴する者が日常生活及び社会生活を営むに当たり円滑に移動することができるようにするため、自動車、鉄道車両、船舶及び航空機、旅客施設、道路並びに駐車場に係る構造及び設備の改善の推進そのほか必要な施策を講ずるものとする。(交通政策基本法第17条

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