全員に恩恵のある「駅のバリアフリー」、都市と地方でこんなに違う杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)

» 2022年01月21日 14時46分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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 「バリアフリー運賃加算制度」も「新路線建設」「路線改良」の加算運賃と同じ考え方だ。しかし始まったばかりだから、まだ認定事業は発表されていない。

 鉄道施設のバリアフリー関連では助成制度もすでにある。「都市鉄道整備事業」は国と地方自治体が事業費の35%をそれぞれ助成する。「地域公共交通確保維持改善事業」「訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業」「鉄道駅総合改善事業」では国も自治体も3分の1ずつを助成する。鉄道事業者の負担は3分の1程度である。

 「バリアフリー運賃加算制度」によって鉄道事業者負担分を加算運賃でまかなえる。このほかに固定資産税、都市計画税の減税制度もある。

 国や自治体からさんざん支援してもらっておいて、さらに運賃加算だ。利用者にとっては納得いかないかもしれない。しかし、都市部においてバリアフリー施設は障害者だけではなく、誰にでも利点がある。

 黄色い点字ブロックはプラットホームの安全境界線も兼ねているし、ホームドアは目の不自由な人だけではなく、スマートフォン歩きの人も守る。スロープやエレベーターは、ベビーカーやキャスター付き大型トランクを使う人にも助かる。

 スフィンクスが語るように人間は「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足の動物」だから、誰もがバリアフリー設備の恩恵にあずかるわけだ。だったら全額公費でもいいと思うけれども、鉄道事業が民間企業であるから、全額補助は法人の不公平などとなってしまう。

都市のバリアフリー設備費用の推移。維持費がかさみ、新設費用が捻出しにくい(出典:国土交通省、<第2回 都市鉄道における利用者ニーズの高度化などに対応した施設整備促進に関する検討会>バリアフリー化に係る費用負担のあり方について

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