メルカリがこうした取り組みを始める背景には、近年の「リカレント教育」への関心の高まりがある。高度な専門知識を習得することで、社員個人のキャリアの可能性が広がり、所属企業のイノベーション促進などが期待される。
その一方で、日本では他の先進国と比べて社会人による大学院での学び直しの機会は少ないとされている。特に博士課程については、学費などの金銭的な負担や、研究時間と業務の両立が難しいことから、進学のハードルが高かった。
こうしたことを背景に同社は「既存の枠にとらわれず、メルカリグループのミッション達成に貢献し、広く経済発展と社会的課題の解決に資する研究テーマを持つ人材を育成・支援すること」を目指し、同制度を創設した。
同社によると、ヤフーやZOZO、島津製作所、Meta(旧フェイスブック)、エクサウィザーズ、ソフトバンクなどにも同様の制度があるという。
博士課程進学だけでなく、海外では従業員の大学進学やITスキル向上に向けたプログラムを提供する企業もある。
米アマゾンは21年9月、米国内の物流拠点で働く従業員75万人を対象に、大学授業料を全額負担する取り組みを22年1月に始めると発表。25年までに総額12億ドル(約1300億円)を投資し、社員のスキル向上を図るという。
同制度では書籍代などを含む、米国内100校の授業料を前払いする形で全額負担。学士号や高校卒業資格、ESL(English as a Second Language:非英語圏出身者向けの英語教育)などの資格取得を支援する。申請対象者は入社3カ月以上の時間給で働く従業員。利用年数の制限はなく、同社に在籍する限り、資金面での支援を受けられる。
同社はまた、6カ月間の研修を経た退役軍人などの非IT出身の従業員を、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のデータセンターの技術者に採用する「AWS Grow Our Own Talent」や、ITスキルが浅い技術者に学習機会を与えることで1万ドルの年収アップを支援する「Surge2IT」、Prime VideoやAlexa、AWSなどグループ全体の職場を使い、1年間の研修プログラム終了後に社内の各部署に配属する「The User Experience Design and Research Apprenticeship」も従業員に提供している。
同社は、2025年までに米国内の従業員10万人を訓練し、より賃金が高い仕事への移行を支援する「Upskilling 2025」を19年に発表していた。
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