函館本線「山線」並行在来線として2例目の廃止、鉄道を残す方法は?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/7 ページ)

» 2022年02月04日 09時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

並行在来線、西九州新幹線の特殊事情

 並行在来線についておさらいしておこう。並行在来線とは「整備新幹線に平行する在来線」のうち、JRが「この区間は不要」と切り捨てた区間だ。

 新幹線が開通すると、新幹線と重複する在来線区間の利用者が減る。収入が減って赤字路線になる。あるいはもともと赤字で、さらに膨らむ。だから整備新幹線の着工条件に「JRが運行を引き受ける」と「JRの並行在来線からの撤退を地元自治体が了承する」が含まれる。このほかに「建設費の一部を自治体が負担する」などがある。

 「JRに新幹線の運行を担ってもらうからには、在来線から撤退してもよい」という取り決めができていて、在来線のどの区間を撤退するかはJRが決める。逆に、JRが必要だと思えば、その区間は手放さなくていい。

 北陸新幹線においては、信越本線の高崎〜長野間が平行しているけれども、JR東日本は高崎〜横川間と篠ノ井〜長野間は手放さず、横川〜篠ノ井間を切り離した。残された区間のうち、軽井沢〜篠ノ井間は第三セクターのしなの鉄道に移管され、横川〜軽井沢間は引き受け手がなく廃止された。九州新幹線では、鹿児島本線のうち八代〜川内間だけが切り離された。

 JRがいらないと思うほどの赤字区間だから、並行在来線は赤字で当然だ。それでも通学や通院などで必要ならば、地元で運行を引き受けるしかない。赤字覚悟だけれど、新幹線の開通で地域に利点が大きければ許容しなくてはいけない。

 新幹線とピッタリと並んでいなくても、JRが不要と判断した区間が並行在来線になる。西九州新幹線の場合、長崎本線より大村線の方が近いけれども、JR九州は長崎本線を指定した。地理的な問題より輸送動向が重視されるからだ。福岡〜長崎間で捉えれば長崎本線の需要が激減する。大村線はどちらかといえば長崎〜佐世保間の一部を担うから、西九州新幹線で代替できない。

 ただし、長崎本線については「平行しているとはいえない」と地元が納得しなかった。そこで妥協案として「JR九州から切り離すけれども、あらためてJR九州が自治体から運行を受託する」という形で決着した。これが冒頭の「第二種鉄道事業を許可」である。

 現在はJR九州が保有し運行する「第一種鉄道事業」だけれど、西九州新幹線開業後は運行のみを担当する「第二種鉄道事業」になる。線路保有者(第三種鉄道事業)は佐賀県と長崎県が設立する「一般社団法人佐賀・長崎鉄道管理センター」に移管される。

長崎本線の並行在来線区間はJR九州から分離され、あらためて運行受託という枠組みになる(出典:JR九州、長崎本線(肥前山口〜諫早間)第二種鉄道事業許可について

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