函館本線「山線」並行在来線として2例目の廃止、鉄道を残す方法は?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/7 ページ)

» 2022年02月04日 09時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

観光鉄道として再生できるか

 地方ローカル線に共通する状況として、地元の人々の利用が少ないだけに生活路線としての存続は難しい。可能性としては、観光に特化した鉄道として、地域外からの交流人口拡大を目指すほかなさそうだ。

 観光目的鉄道として存続された路線としては、平成筑豊鉄道門司港レトロ観光線がある。門司港レトロ地区の貨物線を再利用した路線で、施設は北九州市が保有し、運行は平成筑豊鉄道が実施している。命名権を販売し、北九州銀行レトロラインの愛称がある。

 鉄道事業法の「特定目的鉄道」として許可された路線で、1例目は05年の「愛・地球博」でトヨタ自動車が運行したIMTS路線だった。北九州銀行レトロラインは「特定目的鉄道」として2例目で、初の常設路線となった。

 宮崎県の「高千穂あまてらす鉄道」は旧国鉄高千穂線を継承した高千穂鉄道が廃止されたあと、高千穂駅と高千穂鉄橋を結ぶ約5.1キロメートルを「公園内遊具」として運行している。目標はもっと高みにあり、日之影温泉駅までの延伸、さらには第一種鉄道事業者として高千穂鉄道の復活をめざしている。

 北海道には「北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線」の車両と一部線路を引き継いだ「ふるさと銀河線りくべつ鉄道」が活動している。陸別町商工会が事業主体となり、車両の運行と営業などの業務は「株式会社りくべつ」が担う。

 列車の運行はOB運転士や自社養成のボランティア運転士が担当し、最長運行距離は約5.7キロメートルと長い。現役のローカル私鉄「紀州鉄道」の2.7キロメートルのほぼ2倍の距離だ。

 並行在来線で最初の廃線となった信越本線の横川〜軽井沢間も、観光鉄道として復活させる構想がある。現在は旧横川駅構内に「碓氷峠(うすいとうげ)鉄道文化むら」が作られており、国鉄時代の車両の保存展示を実施するほか、廃線跡の一部でトロッコ列車を運行している。

 碓氷峠専用に作られた電気機関車「EF63形」の体験運転も行われている。この廃線跡を延伸して「北九州銀行レトロライン」のような「特定目的鉄道」を目ざすという。

北九州銀行レトロライン「潮風号」。JR九州と接続する線路は切断した。接続すると高規格な保安設備が必要になるためだ

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