函館本線「山線」並行在来線として2例目の廃止、鉄道を残す方法は?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/7 ページ)

» 2022年02月04日 09時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

函館本線「山線」の運命

 北海道新幹線の並行在来線として、JR北海道は江差線の木古内〜五稜郭間、函館線の函館〜小樽間を指定した。このうち木古内〜五稜郭間は第三セクターの「道南いさりび鉄道」に移管された。

 残る函館〜小樽間も北海道新幹線札幌延伸開業時にJR北海道から分離される。分離までは沿線自治体が了承しているから整備新幹線が着工された。分離後の並行在来線をどうするかは、いままさに話し合いが持たれている。

 函館〜長万部間は鉄道を残す方針が規定になっている。札幌と本州を結ぶ貨物列車が使うからだ。ただし、旅客列車を存続させるか否かまでは定まっていない。旅客列車を走らせるために沿線自治体の負担が大きいというなら、旅客列車はバスに転換する考えもある。

 そうなれば自治体は線路に関与しなくてもいい。自治体が線路を保有してJR貨物から線路使用料をいただく、という枠組みは考えづらい。JR貨物がすべて引き取るほかないだろう。

 長万部〜小樽間は貨物列車が走っていないから、旅客列車をバスに転換すれば、線路そのものが不要となる。沿線自治体はバス転換でまとまりつつある。

 21年12月27日に開催された「北海道新幹線並行在来線対策協議会 第11回後志ブロック会議 議事録」によると、余市町は余市〜小樽間の鉄道は鉄道を残したい。倶知安町はバス転換して在来線施設は撤去、新幹線駅のための周辺整備を急ぎたい考えだ。共和町はバス転換を表明し、余市〜小樽間については当事者となる小樽市と余市町で決め、費用負担してほしい。仁木町は全線バス転換が現実的。長万部町はバス転換。小樽市、黒松内町、蘭越町、ニセコ町は保留とした。

 その後、北海道新聞によると、小樽市と余市町は1月11日に鉄道存続を前提とした協議を実施。20日には北海道を交えて3者会議を開催した。存続のための財政負担について話し合うという主旨だった。しかし国の支援がないか確認するだけに終わったという。

 黒松内町は26日にバス転換を支持する方針、ニセコ町も28日にバス転換の方針が報じられた。31日、小樽市長は「バス転換も視野に入れる」と表明した。小樽市では2月中に4回、並行在来線住民説明会を開催するという。

 2月3日に開催された「北海道新幹線並行在来線対策協議会 後志ブロック会議 」では、黒松内町とニセコ町に加えて、蘭越町もバス転換を表明した。これで長万部〜余市間のバス転換は確定的になった。余市〜小樽間の行く末が気になる。

長万部〜小樽間、沿線自治体の判断。赤が「バス転換」、青が「鉄道存続」、ピンクが「バス転換も視野」(地理院地図を筆者が加工)

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