クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

新生日産が目指す道とは 電動化への“野望”を読み解く鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/4 ページ)

» 2022年02月08日 07時00分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]

夢の新世代電池の実用化と電動化への傾倒

 新体制下の元、着々と構造改革を進める日産は、さらに21年11月に新たな長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」を発表します。「Ambition」とは「野望」や「野心」という意味。では、その野望や野心とは何なのでしょうか。それは「電動化」です。

「NISSAN NEXT」に続く、「Nissan Ambition 2030」では営業利益率の向上も狙う

 日産は、今後5年で電動化のために約2兆円の投資を行うと宣言しました。そして28年度に、次世代の高性能電池と目される、全個体電池を市場に導入。30年度まで、つまり、これから8年ほどで15の電気自動車と、23の電動車を投入する計画です。世界販売の50%以上を電動車にしようというのです。

 驚くのは、まだまだ実用化は先と思われていた全個体電池を、ハッキリと量産化する時期まで示したところです。全個体電池は、従来のリチウムイオン電池の約2倍のエネルギー密度を有し、充電時間は3分の1になるといわれています。これが実用化されれば、より大量の電池を搭載できるようになるため、大型SUVのEV化に適していると考えられています。

 また、日産は、この新しい電池を28年度に1kWhあたり75ドル、将来的には65ドルまで低減するのが目標と明かしました。さらに、これまであるリチウムイオン電池も、28年度までに現在の65%までコストを低減するというのです。半額以下です。

EV最大のネックである電池の価格半減と、全固体電池の投入を予告

 EV普及の最大のネックは、搭載する電池の価格が高すぎることにあります。それが、あと6年ほどで、半額以下にするというのです。さらに最新の全固体電池も1kWhあたり75ドル。現行リーフとほぼ同等の60kWhを搭載しても4500ドル、つまり約54万円に過ぎません。これくらいの価格になれば、十分にガソリン・エンジン車とコスト面でも競えることでしょう。

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