クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

軽自動車EVに再挑戦する日産・三菱の勝算 鈴木ケンイチ「自動車市場を読み解く」(3/3 ページ)

» 2022年03月07日 07時00分 公開
[鈴木ケンイチITmedia]
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再挑戦の課題は?

 一方、ネガティブなポイントは、どんなものでしょうか。

 最大のネックは価格ではないでしょうか。確かに、09年よりは安くなっていますが、まだまだエンジン車よりも割高です。航続距離が短いという不便さを我慢させるだけのメリットが必要なのに、さらに「値段まで高い」というのは正直辛いでしょう。

 ただし、EVの高価格の理由は、電池の価格にあります。日産は、1月27日の「ルノー・日産・三菱自動車、アライアンスのロードマップAlliance 2030を発表」の記者会見にて、「バッテリーコストを26年には50%、28年には65%削減する」との目標を明かしました。これが実現できれば、軽自動車のEVも大幅に下げることができるはずです。

 そして、最後の懸念が、ウクライナでの戦争です。この騒乱が、欧州のエネルギー事情に大きな影を落とすことは間違いありません。そこで、欧州の「EVシフト」の流れが、どうなるのかは、いまだ不明です。もしも、「EVシフト」が終焉となり、逆に「エンジン車の復古」となれば、その影響は日本にも及ぶはず。

 どちらにせよ、日産と三菱自動車の軽自動車のEVの再挑戦は、国内の雰囲気次第ではないでしょうか。特に軽自動車のユーザーは、走る・曲がる・止まるという走行性能よりも、世間的な流行や利便性、そして価格でクルマを選ぶ傾向が強く見えます。実際に、エンジン車とEVを乗り比べすれば、誰もがEVの静粛性や力強さなどを認めるはず。でも、それだけでは、50〜100万円もある価格差はひっくり返りません。そうではなく、必要なのは「EVは流行のクルマ」「EVを買うのは格好良い」というイメージでしょう。そういう雰囲気があれば、EVが購買リストに入ってくるはずです。

 逆に、「これからはEVだ」という空気が醸成できなければ、積極的にEVを選ぶ理由が弱くなります。エンジン車よりも価格は高いし、航続距離が短いなどの不便もあります。家庭に充電インフラを設置する必要もあります。日産と三菱自動車の再挑戦に必要なのは、イメージ戦略ではないでしょうか。

筆者プロフィール:鈴木ケンイチ

1966年9月生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく“深く”説明することをモットーにする。


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