まるで「就活版ネトフリ」? Z世代の価値観にマッチした「動画就活」が注目されるワケ新卒採用は時代で変化(3/3 ページ)

» 2022年03月08日 10時00分 公開
[酒井麻里子ITmedia]
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 「短時間の動画で情報を得るのが当たり前になっているので、オンラインの企業説明会を1時間視聴するといったことは負担に感じるようです。そのため、トップページにはショートバージョンを掲載し、関心をもった学生が企業の詳細ページからフルバーションを閲覧できる流れとしています」(在原氏)

従来は出会えなかった企業と学生が出会える

 動画サイトで映画予告を見る感覚で、「取りあえず気になるものを再生してみる」ことができるからこそ、学生はこれまで知り得なかった企業と出会えるチャンスが生まれ、企業にはこれまで自社に関心をもつことのなかった学生を採用できる可能性が生まれる。

 「従来型の就活プラットフォームの場合、業種で絞り込んで検索するケースが多いため、その段階で対象から漏れてしまった企業とは出会えなくなります。しかし、実際には業種分類だけでは分からないことも少なくありません。例えば、コクヨの企業説明動画では、冒頭で『私たちは文具メーカーではく、空間デザインをトータルで行う企業だ』といった趣旨の話がされていますが、おそらく多くの就活生はそのことを知らないのではないでしょうか。実際に企業説明を聞かないと分からないことを簡単に知ることができるのは、短い動画を使う大きなメリットだと考えています」(在原氏)

労働観に変化? Z世代が会社を選ぶ基準とは

 JOBTVはスカウト型マッチングの機能も備えている。就活市場全体としても、新卒向けのスカウト型採用サービスは以前より増えつつあるというが、その背景には、昨今、注目度が増しているジョブ型人事制度の台頭があることも無視できないだろう。あらかじめ職務内容を明確に定義した上で雇用契約を結ぶジョブ型とスカウト型採用は、相性が良いと考えられる。企業は、学生がどういったことを学んできたか、得意としているか、その特性を買ってオファーを出す形になるためだ。終身雇用、年功序列の仕組みが崩壊、終焉を迎えようとしている現状は、これから社会に出ていく就活生こそ高い関心をもって見ているはずであり、それもあってかZ世代の労働観(心情的なトレンド)にも変化が出ていると、在原氏は話す。

 「少し前の世代までは、大手や安定した企業を選ぶケースが多かったと思いますが、今の学生は、大手でなくても自分の本当にやりたいことを実現できる会社、有名でなくても自分に一番向いていると感じる会社を志向する傾向が強くなっています」。在原氏はそう話し、最後に「今後は、よりよいマッチングが行えるように、それぞれのユーザーに合った企業や学生をAIで提案する機能なども追加していけたらと考えています」と今後の展望を語ってくれた。

photo 企業は、学生の自己紹介動画を見て直接スカウトのメッセージを送ることもできる

 新たな価値観で会社を探し、自分の強みを自分らしくアピールしたいと考えるZ世代。動画就活やスカウト型採用という新しい潮流。そして迅速かつ最適なマッチングを支援するAIといったITテクノロジーの進化。絶えず進歩する採用市場において、従来の採用手法に固執する企業は、優秀な人材を逃し続け、結果として企業競争力を削られていく――そんな時代が既に訪れている。時流を読み間違えることのない採用活動のアップデートが、新卒、中途問わず、熾烈化している人材争奪戦を勝ち抜くカギなのかもしれない。


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