イオンの「最低賃金以下」問題から見える、“安いニッポン”の無限ループスピン経済の歩き方(2/7 ページ)

» 2022年03月08日 10時11分 公開
[窪田順生ITmedia]

安さの無限ループ

 最近よく「先進国の中で日本だけ30年間賃金が上がっていない」という問題が指摘されている。「デフレが悪い」「消費税をなくせばすべて解決」などさまざまな意見があるが、低賃金の直接的な原因としては(1)から(3)をエンドレスで繰り返してきたことが大きい。

(1)安い商品・サービスを提供するために、企業は人件費をギリギリまで低く抑える

(2)給料が上がらないので、消費者は「もっと安く!」の大合唱となる

(3)値上げによって客離れするのが恐ろしい経営者はこれまで以上に「安さ」に固執する

 この「安さの無限ループ」をこれ以上ないほど分かりやすく、効率的にまわしてきたプレイヤーのひとつがイオングループだということを、今回の最低賃金以下求人問題は示唆しているからだ。

一般労働者の賃金は横ばいが続いている(出典:厚生労働省)

 冒頭でも少し触れたが、現在、イオングループは全国約1万店で、「価格凍結」を実施中だ。原材料費や輸送費の高騰で、食品メーカーなどが軒並み値上げに踏み切っている中で、トップバリュの食料品や日用品計約5000品目の価格を3月31日まで据え置くことを発表している。イオンやマックスバリュを利用している方ならば、一度は「今こそ全力で家計応援!」というポップをご覧になったことがあるはずだ。

 庶民の痛みに寄り添う「小売業の鏡」ともいうべき英断だが、一方でイオングループが足元で働くパートやアルバイトの方たちに対しても、「全力で家計応援!」をしているのかというと、必ずしもそうとも言えない部分が浮かび上がる。

 ご存じの方も多いだろうが、イオングループは日本一多く非正規労働者が働いている。東洋経済オンラインの『「非正社員が多い企業」500社ランキング最新版』(2月26日)によれば、非正規社員数は25万2989人。唯一20万人を超えた企業として「不動の1位」と紹介されている。

 このように日本の雇用を支えている巨大グループ企業が、そこで働く非正規労働者に対して「全力で家計応援!」をすれば、全国の地域経済もそれなりに良い影響があるということでもある。

 が、現実はそうなっているのかというとなかなか難しい。例えば、先ほど「うっかりミス」のあったイオン九州を例に見てみよう。

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