1953年、朝鮮戦争が休戦となって、この空前の出血受注ブームは一段落するが、これ以降、日本企業にとって「損して得とれ」というビジネス哲学ビタッと定着していく。つまり、とにかく客に安く買ってもらうことが商売の真髄なので、多少の赤字を垂れ流してでも「安さ」で売っていくというのがデフォルトになるのだ。
その証が高度経済成長期に一気に増えたスーパーマーケットやパチンコ店などの軒先に多く掲げられた「出血大サービス」という宣伝文句である。近年は字面がよろしくないということで「死語」になったが、かつては、血を垂れ流しながら安いものをたくさん売って、それで利益を確保していくというのが、日本型ビジネスの常識だったのだ。
そして、この伝統文化は令和日本にもちゃんと受け継がれている。例えば、イオンの「価格凍結」は巨大グループの規模を最大限生かしたスケールメリットの賜物であり、採算が取れないなんてことはまったくない。が、ちょっと視点を変えれば、そこで働く労働者たちは、最低賃金スレスレの賃金で働いており、家計も苦しいわけだから「出血」をしているとも言えなくもない。
日本人が東京2020のときに誇らしげに胸を張ったコンビニもそうだ。外国人アスリートたちは「こんなおいしいパンが信じられないくらい安く買えるなんて日本はスゴい!」と賞賛したが、その常軌を逸した「安さ」は、パン工場やコンビニで働くバイトやパートの人が、地域内の最低賃金でも文句を言わずに働いてくれているから成立する。
企業は赤字ではないが、労働者が「血」を流すことによって、海外の人々が驚愕(きょうがく)する「安くておいしいコンビニ飯」ができ上がっている。最低賃金労働者の使い方が見え方としてスマートに洗練されただけで、やっていることは「出血受注」とそれほど変わらない。
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