トップバリュのWebサイトでは、なぜこんなに「お買い得価格」で提供できるのかという疑問に対して、「計画生産」「全量買い取り」「流通の中間コストの削減」「営業費・広告費の削減」という4つの取り組みを上げている。要するに「グループの規模を最大限生かすことで、多くの販売量を有し、独自のグローバルネットワークを生かしたサプライチェーンを構築」しているからだというのだ。
これだけのことができる巨大企業ならば「低価格」と「高賃金」の両立を目指すことができるのではないか。例えば、イオン同様にグローバルサプライチェーンの効率化など物流コスト圧縮で「低価格」を実現しているコストコのパートタイム(アシスタント)の時給は1500円。さらに以下のような自動昇給制度がある。
『1000時間ごとに、時給が20円から最大50円アップし、最高1750円(月収例30万円)もしくは1900円(月収例33万円)まで昇給します』(コストコのWebサイト)
ただ、ここで誤解なきように強調したいのは、イオンという企業が最低賃金で働かせて労働者を搾取しているとか、そういうことを主張しているわけではないということだ。
日本人はあまり自覚はないが、実はわれわれは世界でも有数の「安さに異常に執着する民族」であることが分かっている。この国で商売、特に小売業をするとなると、「1に安さ、2に安さ、3、4がなくて5に安さ」というほどの「安さの奴隷」にならなくてはならない。
イオンに限らずスーパーなどの小売業は常軌を逸した「安売り競争」への参戦を余儀なくされ、生き残るためには、どうしても労働者の賃金は後回しにしなくてはいけないという構造的な問題があるのだ。実はこれこそが「安さの無限ループ」を回し続けている最大の原動力となっている。
そのあたりの問題を国際比較で明らかにしているのが、「物価」を研究している東京大学・渡辺努教授の研究室で行った調査だ。
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