続いて稲川社長は、民間宇宙開発の歴史についてこう振り返る。
「スペースシャトルは大成功したかのように思われていますが、実は違います。お金がかかりすぎたり、大きな事故を起こしたりしました。GDPの何%を宇宙予算に入れていた米国ですら、宇宙開発は停滞してしまった時期があります。そのような経緯があって現在では民間に委ねている動きがあるのです。
日本ではJAXAが頑張っていたところもあり、なかなか民間主導で宇宙開発をする時代は訪れませんでした。だからISTが創業した13年当時も『日本では民間の時代は来ないんじゃないか』という声が多かった部分があります。ところが近年は、国内でも徐々に産官学が連携して民間にシフトする動き出ていて、日本の民間ロケット開発はまだ始まったばかりという状況です」
その後、主要エンジニアスタッフによる座談会が開かれた。宇宙機器メーカーで10年以上にわたって搭載機器の開発に従事したのち、ISTに転職した開発部の中山聡さんが司会を務め、21年7月の2回連続ロケット打ち上げ成功の舞台裏が明かされた。
システムを担当した山中翔太さんはMOMO・ZERO総合システムの他、技術の取りまとめを担当している。
「一言で言うととても安心して飛ばせるようになりました。そのために、『MOMO』を改良した『MOMO v1』というロケットを飛ばす段階で強度などを徹底的に解析・試験しました。だからv1を打ち上げる時には『普通に打ち上げれば成功するよね』と自信が持てる、強固で堅実な機体にすることができました」と手応えを語った。
一方、構造設計を担当した安晋一さんは「システムのチームからは良い意味でめちゃくちゃいじめられた」と笑う。「でもそこまでしないと品質が上がらないことも分かっているから、なんとか応えられたし、機体構造の完成度はかなり高くなりました」と話す。
機構系部品を扱うメカトロニクスグループの山岸尚登さんは、前職では本田技術研究所で量産二輪車やレース用二輪車の燃料系・吸気系の設計、電動モビリティを開発した経歴を持つ。
「20年の12月に開発のチームに入りました。ただ、開発チームがまだまだ他のグループと足並みをそろえきれておらず、この状況で本当に夏に打ち上げられるのかと半信半疑でした。でも開発をしていくうちにだんだんとチームワークがかみ合うようになり、成功につなげることができました」と胸を張った。
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