離職者が増加、「買収される側」の社員が反発、「買収する側」の社員にも不安と不信感が広まる──M&Aで起きてしまいがちな失敗を回避するための鍵は、“人事”の仕事にあった。人事コンサルタントの桐ケ谷優氏が、「M&Aを成功に導く、人事領域の対応」について解説する。
前編記事「苦境の老舗を、好調のライバル主導で統合 反発を生まないために、人事がすべきことは?」では、表題の事例1のほか、社員の実力レベルが異なる2社の統合で「評価が厳しくなって閉塞感」「一方だけ評価が甘く不公平感」どちらの不満も回避した事例2を紹介し、成功の要因を解説した。
後編となる本稿では、3つ目の事例および各事例を通じた人事制度統合の教訓をお伝えする。
事例3は、医療関連メーカー2社の合併事例だ。医療関連メーカーの業界でも他業界同様、新たな製品開発の強化や販売網の拡大に向け、ライバル企業同士の合併事例が見られ始めている。
E社は業界内でも歴史のある老舗メーカーであり、これまで強い顧客基盤のもと、順調に業績を伸ばしてきたが、ここ数年は競合メーカーの製品に市場を奪われ業績が伸び悩んでいた。一方、F社は創業後間もないものの、独自の技術力と強力な営業力を武器に事業を急拡大させており、M&Aを通じてさらなる事業成長を図ろうとしていた。
F社からの提案で両社は合併に向けた協議を進めることとなり、最終的にF社が存続会社となりE社を吸収合併することが決まった。両社従業員の実力値と処遇水準を比較したところ、両社の処遇水準の乖離は大きく、特にE社従業員の処遇水準が実力値に比べ大きくインフレしていることが明らかとなった。
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