DCJPYのホワイトペーパーでは、民間デジタル通貨のさまざまな用途が検討されているが、それをひとまとめにいえば、「ビジネスのデジタル化に対応するデジタル通貨」となるだろう。
例えば、見積書、注文書、請求書、そして振り込みという一連の取引の流れを考えてみよう。いま、電子帳簿保存法や電子インボイス制度など、制度変更のさなかにあり、企業はこれまでの紙ベースからデジタル化を進め始めている。しかし取引のやりとりがデジタル化されても、最後の「振り込み」がやっかいだ。実は銀行振り込みはあまりデジタル化されているとはいえないからだ。
経理部門のように振り込みをしたことのある人なら、銀行のネットバンキングが一世代前の作りになっていることはよく知っているだろう。一連の取引に連動して自動的に振り込み処理が行われる……なんてことはなく、担当者が振り込み先と金額などをExcelで作成し、それをアップロードして一括振り込みが行われるのが一般的だ。
もちろん昨今では、銀行APIというものも登場した。これはプログラムで残高照会や振込処理などを指示できるもので、すべての銀行が対応しているわけではないが、請求書を受け取ったら自動的に相手先に振り込みを行うという処理も、理屈的には可能になる。
ただしこれで問題がすべて解決されるわけではない。振り込みを受け取った側の処理があるからだ。通常、振込入金通知には「いつ」「どの企業から」「いくらか」の情報しか記載されていない。そのため、どの請求書に対応した入金なのかは、1件ずつ目で照合する必要があった。いわゆる消込業務だ。
この問題に全銀ネット側で対応しようとしているのが18年に稼働を始めた全銀EDIシステムだ。これは振り込みに、注文番号や、商品名、個数、単価、消費税などの情報を付け加えられるというもの。単にお金が動くだけでなく、そこにデータがセットになって、初めてビジネスフローをデジタル化できる。
同様のことを、ブロックチェーンを使って行おうというのがDCJPYだ。お金を動かす「共通領域」に加え、データを司る「付加領域」をセットにすることで、お金とデータをセットで扱えるようにする。
「全銀EDIに考え方は近い。DCJPYではプログラミングができるので、さらに一歩進んでいる」と時田氏は言う。
お金に相当するDCJPYのバリューは共通領域で、データは付加領域でやりとりし、それぞれが同期する構造だ(DCJPYホワイトペーパーより)
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