感染が広がってから3年目に突入した新型コロナウイルス。感染力の強いオミクロン株は2022年に入り一気に感染爆発し、再び日本経済を振り回している。その悪影響を一番先に受ける中小企業を助けようというのが「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」だ(タレントの肖像権ビジネスに商機 中卒だった元自衛隊員が、起業するまでの軌跡)を参照。
第3期のアンバサダーとして郷ひろみ氏、永作博美氏、市原隼人氏、滝川クリステル氏を迎え、コロナ禍で苦しむ中小企業をサポートする。1月には記者発表会が開かれ、4人も登壇した。
このプロジェクトを主導するのが中小企業のチカラ(東京都渋谷区)の山下佳介社長だ。
「当社の成立は2021年6月で、人材紹介会社リアステージの一事業としてスタートしました。リアステージは14年に創業した従業員120人ほどの企業です。年間の売り上げは18億円ほどで、取引者数は1000社に上ります」(山下社長)
20年になり新型コロナウイルスが日本でも広がると、同社の契約者数は4分の1の250社まで減少した。同社が中小企業を対象に実施した調査によると「自社の先行きに不安を感じる」と回答した企業が76.6%、「経営基盤の強化の必要性を感じる」は79.0%に達した。中小企業の切迫感が伝わる数字だ。
山下社長は「これまで中小企業の方々にお世話になってきました。今回は『私たちが何か力になれないのか』『中小企業で一丸となってこの苦境を脱せないか』との思いからこのプロジェクトを立ち上げました」と経緯を語る。山下社長によると中小企業には長らく「広告宣伝活動」「情報発信・PR」「採用定着」という3つの課題があったとし、「コロナ禍ではよりこの3つが重要になった」と話す。
そこで山下社長は、同プロジェクトに参加する企業は自由にアンバサダーの写真を使用できるビジネスを立ち上げた。例えば「広告宣伝活動では有名タレントの方に協力をいただき、これまでになかった業界初の肖像使用形態を実現させました」と胸を張る。
参加企業はこのタレント肖像を活用した施策により、企業のブランディングや知名度向上を図り、ひいては業績向上につなげることが期待できる。山下社長は「結果的に日本を元気にできればうれしい」と話す。このコンセプトが好評を博し、第1期(21年1〜7月)には48社だった参画企業が、第2期には160社にまで伸びている。
今回の第3期においてはテレビ東京のタイアップ番組などを通じて「自治体・企業課題の解決」「Webマーケティング支援」「中小企業コミュニティ創出」「SDGsへの取り組み」の4つを推進していくという。
発表会では、経済アナリストの馬渕磨理子氏が中小企業の現状やSDGsについて解説した。馬渕氏は「中小企業が国内の99.7%、雇用者の7割を占めます。『資金不足・債務拡大』『人材不足・事業承継』『設備投資・DXの遅れ』が課題となっていて、これらの影響で倒産件数が増加しています」と問題点を語る。
さらにSDGsについては「取り組んでいる」が73.1%と、意外に多くの会社が取り組んでいる一方で「広報活動に利用している」と答えたのは36.8%にとどまり、外部への発信に問題があることを指摘した。
東京商工リサーチの調査によれば、普通法人のうち赤字企業は65.4%に上り、借入金は、20年は月商の5.32倍だったが21年は8.2倍にまで債務が拡大していることも分かった。20年から21年12月までのコロナ倒産は累計2560件に達し、生き延びている企業においても後継者については65.0%超が不在であるという問題もかかえていると説明した。
馬渕氏は「現在は高度成長期ではないため、幸福度がプラトー(一定)の社会で、多様性、共感社会が支持をされます。経済的豊かさを手に入れた人類が次にほしくなるものは『最も価値が高いトレンド』であり、それがSDGs」と、昔とは異なる価値観の社会であることを訴えた。「SDGsに取り組むことは慈善ではなく強みになる」とも語った。
実際に取り組むと、資金調達の可能性がでてくるほか、売り上げ・利益が向上し、環境面にも寄与し、企業のブランド価値を高め、かつ優秀な若い世代の人材の確保にまでつながるとした。ただし「SDGsにおいては取り組みを発信するところまでが重要で、PRの効果的な活用は企業経営の最重要課題でもある」とした。
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