郷ひろみ、永作博美らが参加 悲鳴上げる中小企業を救うプロジェクトとは?SDGsは慈善ではない(2/2 ページ)

» 2022年03月12日 18時40分 公開
[武田信晃ITmedia]
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郷ひろみ氏「変化し続けないと、進化がない」

 アンバサダーとして起用された郷ひろみ氏に、中小企業の現状について尋ねると、今回アンバサダーを引き受けた理由を教えてくれた

 「想像以上に苦しんでいる人が多いと思います。先が見えない時代ですが、知恵を出し合って生きていかないといけない。僕は常に前を向いて生きていくタイプですが、僕のエネルギーを感じて、それを受け取ってくれる中小企業の方々が少しでも前向きな気持ちが大切だと思ってもらえたらありがたいです」

アンバサダーを引き受けた理由を語る郷ひろみ氏

 22年は郷氏にとって、レコードデビュー50周年に当たる。「実はファンクラブは1971年に作られていて、2021年に結成50周年の記念グラスを作りました。桐箱に入っているのですが、普通は捨ててしまいます。でもSDGsとして何とかならないかと考え、その箱をティッシュボックスとして使えるようにしました」と、自らアイデアを出して、SDGsに貢献したエピソードを教えてくれた。

 「50周年を迎えましたが、新しい旅が始まると思っています。つまり、挑戦には終わりがないんです。週3回トレーニングをしていますが、体の柔軟性も大事ですが、それ以上に心の柔軟性が必要だと思っています。時代が変わればその時代に即応していかなければいけません。レコード→CD→配信と音楽ビジネスの在り方も変わってきましたが、この先どう変化していくのか僕にも分かりません。でも、その変化に対応できる心構えを持ちたいと思っています」と話す。

 変わることを恐れる人や企業は、この先の時代を生き残っていけない。郷氏にどんな時代でも一歩踏み出すことを恐れない原動力が何かを問うと、こう答えてくれた。

 「それだけ切羽詰まっているのでしょうね。変化は訪れているのだから、自分が変わらざるを得ないのです。『Give & Take』という言葉がありますが、Give & Getとも言えます。つまり、何かを得るには何かを与えないといけないのです。そのためには苦労しないといけません。これをやるためには、しんどいけれどこれをやらないといけない。いつもそう思って努力してきました。それが、ここまでやり続けられた理由だと思います」

 最後に中小企業の経営者にメッセージをくれた。

 「僕自身が『ああだこうだ』と言うことではないので、僕が進んでいくその背中を見て『そうだよな』と思ってもらえるのが一番良いかなと思っています。今年も年間100ステージある予定ですし、久々にドラマもやります。年齢に関係なくチャレンジしていきたいと思っていますので、中小企業の方にも心から頑張ってほしいと思っています」

滝川クリステル氏「フードロスを減らしたい」

 滝川クリステル氏にプロジェクトへの感想を聞くとこう話した。

 「誰かが立ち上がらないと中小企業という存在が埋もれたままになってしまう可能性を感じました。山下社長がこのプロジェクトを始めて新しい形で盛り上げていけそうな気がしています」

 滝川氏はとりわけ中小企業が取り組む今回のテーマであるSDGsに深い関心を抱いている。

 「SDGsのなかでもフードロスに関心を持っています。日本は年間で646万トンの食品を廃棄しています。これは国連の食糧支援の2倍に相当します。ごみについては生産過程の中でごみを減らす、リサイクルの仕組みを作る、梱包材も減らすなどの取り組みが必要です。そういうところを企業が考えていかないと、私たち使う側が責任を持とうと思ってもバランスを取るのが難しくなります。こういう取り組みをすることによって、企業側が負担するコストも下げられるとも思いますので、多くの中小企業がやがて元気になっていくと思います」

 滝川氏に話を聞くと、先進国の中で食品の廃棄量が一番多い「フードロス大国ニッポン」の実情が浮かび上がってきた。その背景には、SDGsを軽視してきた日本の産業界の体たらくぶりが横たわっている。だが、滝川氏は企業の取り組みに期待を示す。

 「コンビニエンスストアが多いとか、捨てることに規制をかけていないからとかいろいろな理由はあります。ただ、私たちは命あるものをいただいているわけですから、どんどん消費しているだけなのは人間のエゴではないでしょうか。そこを何とかしていきたいです。

 SDGsは、言葉が先行している面はありますが、企業が形骸化しないように実際に取り組んでもらいたいです。99.7%の中小企業の皆さまが動いてくだされば、消費者も同じ気持ちでついていけます」

フードロスについて語る滝川クリステル氏

永作博美氏「時代が変わろうとしている」

 女優の永作博美氏にこのオファーを受けた理由を聞いた。

 「今までとは違う身近な企業を応援できる形というのが、私のなかで新しい試みだったからです。『止まった時があったからこそ生まれてきた今』ということを実感したからだと思いますが、このプロジェクトもその1つだと思います。時代の産物感がありますし、時代が新しく変わろうとしているのだと感じました」と話した。

 「コロナ禍の2年間は、『自分の大切なものって何だろう』ということを考えるようになりました。身近なものをいとおしく思えるようにもなりました。中小企業の方々にはそういう原点に戻って、進んでいってほしいと思いますし、これまで中小企業の方々が話されていたことはそういうことではないかと感じました。今後も中小企業のみなさんを勇気づけて、縁の下の力持ちになれればと思っています」と決意を語る。

女優の永作博美氏

市原隼人「中小企業に支えられて生活している」

 俳優の市原隼人氏にアンバサダーを引き受けようと思った理由を尋ねた。

 「まずお話をいただけたことが本当にうれしかったです。私たちは生まれたときから中小企業の皆さまに支えられて生活していますから、その中小企業の皆さまに対して私が尽力することは当たり前のことだと思っています。なので少しでも支援ができたらうれしいと思いました」

 市原氏は俳優として多くの映画撮影に携わる中でも、照明や小道具の会社など多くの中小企業の人々が作品作りに関わっていることを実感してきたという。また、今回のテーマSDGsについても自分なりに勉強したと明かす。

 「SDGsの17項目を実際に読んでみると、学校でいえば『廊下を走らないでください』『授業中しゃべらないでください』といったことと同じで、意外と当たり前のことが書かれているなと思いました。しかし一方で私は、人間は相手の気持ちを100%理解することはできないとも思っています。だからこそ、相手の立場に立とうと思う最初の1%の気持ちを大切にし、コツコツと重ねていく姿勢が大事だと、さまざまな人たちと出会う中で感じてきました」と思いの丈を話す。

 相手の立場に立つという考えに思い至った経緯を聞いてみた。

 「2016年ころから写真家としても活動しているのですが、その中でパラスポーツ選手や障がい者の方を撮影し、支援しています。実は私の父は障がい者になり、自分で車椅子を動かすことも難しくなっています。一緒にご飯を食べに行くと、『隼人ごめんな。こんな姿でごめんな。こんな見られ方をして恥ずかしいだろ?』と言われたとき僕は悔しかったです。父には『そんなことを思う必要はない。そう思わせる社会が間違っている』と言いましたが、私は父の気持ちを100%理解することはできていないと思いました。私は歩けますし、まだ若い。その経験から、最初の1%から相手の立場に立つことによって見えてくるものがあると思ったのです」

 SDGsの17の目標の中には「全ての人に健康と福祉を」「人や国の不平等をなくそう」といった障がい者への企業の取り組みと関連する項目が複数ある。その意味で、市原氏が言う相手の気持ちを理解する姿勢は、多くの経営者の参考にすべき考え方だと感じた。

 プロジェクトへの意気込みを聞くと「10年、20年たった時に、今やっていることが美しいことだったんだと胸を張って言えるような未来であってほしいです。一番大切なのは未来につなげることです。このプロジェクトも第3弾となりとましたが、尽力させていただきます」と話した。

俳優の市原隼人氏

大切なのは未来につなげること

 今後、中小企業のチカラの活動は本格化していく。今では大勢の人が1人1台、スマートフォンを持つ世界になった。それは簡単にいえば、これまでつながりがなかった人にリーチできる時代になったということだ。

 中小企業のSDGsの取り組みはあまり関心を持たれてこなかった。だが、影響力を持った4人のアンバサダーの活動によって、これまで埋もれていた、しかし画期的な中小企業の活動が世の中に知られる可能性は増すだろう。

 市原氏は「大切なのは未来につなげること」と話していた。第4期だけでなく、第10期、第100期まで続けることができるか、動向を見守りたい。

プロジェクトに参加する中小企業経営者とオンラインで語らうアンバサダー
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