――コロナ禍でのイベント開催をはじめ、木谷会長は他社に先駆けて、先例のないことを真っ先にやることを意識しているようにも思います。
エンタメを商売にしている以上、意識はしています。
――それはなぜでしょうか。
エンタメって大げさな言い方をすると、出てくるのは作品なんですけれども、ファンはある意味で「作り手の生き様を見ている」んだと思うんです。それが最も形として現れるのが、アーティストのライブなんですよね。
ライブイベントに来てくださるお客さまは、その作品のファンであると同時に、その目の前で歌っているアーティストの生き様をまさに見ているのだと思うのです。なので、そのドラマを生み出すためには挑戦し続けなきゃいけない。
もちろん会社経営は、守りの部分を深くまで考えなければいけない。けれども、成長するエンタメは、可能な限りリスクをとらないといけないんです。そうでないと、それはエンタメじゃない。リスクばっかり考えているんだったら、それはエンタメじゃないですよね。
――こうした考えに行きつくのも、木谷会長は経営者でありながら現場の責任者も兼任しているところによるのかなとも思います。現場を大切にしているのは、今仰られたように、ファンが作り手の生き様を見ているからなんでしょうか。
そうですね。エンタメって何が正しいか分からない場合が多いんですよ。だから現場のことまで分かっている上司がゴールまでセットしてあげないと、いい企画が出なくなるものなんですよね。
――木谷会長は、コンテンツを仕掛ける際に「電撃戦」が大事だとも自身のブログで指摘していました。現在ブシロードのコンテンツの柱になっている『BanG Dream!(バンドリ!)』だけでなく、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』や『カードファイト!! ヴァンガード』など、数々の作品を自らヒットに導いていますね。
『バンドリ!』でも製作委員会に対して全体の8割ほどの出資をしており、製作委員会においてマジョリティーを常に持つようにしています。ここで大事なのは、何%を持っているかではなくて、意思決定が早いかどうかです。
日本人や日本の組織って、(誰も責任を持って決断しようとせず、いつまでも結論が出ない会議や話し合いのたとえである)小田原評定が好きなんですよ。ああでもこうでないといって、何となく責任を散らばせてから前に進むのを好みます。どこに責任があるのか分からないようにしてから進むのが好きなので、そうすると失敗しても誰も責任を取らなくていいじゃないですか。だからどうしても決定が遅くなるんですよ。
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