仮に交渉がまとまらなかった場合、DAZNは厳しい状況に陥る可能性がある。DAZNが1月に発表した「ライブコンテンツ視聴ランキング2021」によると、21年の視聴者数トップ10のうち、3コンテンツがEPLの試合。独占配信に加え、南野拓実選手(リバプール所属)、冨安健洋選手(アーセナル所属)など日本代表選手もプレーする同リーグの放映は、集客のための目玉コンテンツの一つだったといえる。
2月にDAZNが値上げに踏み切った際、運営元は「今後さらなる成長のために必要だった」と価格改定の必要性を強調。「現在、提供しているライブコンテンツ、オリジナルコンテンツ、テレビ局の一部番組の配信状況など総合的に勘案した結果、3000円が適正価格」とも主張していた。
だが、値上げを断行した直後に、目玉コンテンツの放映権を喪失したとなれば、ユーザーからの反発は必至だ。DAZNの運営元は取材に対し「値上げは約1年前から計画していた」と回答しているが、時系列のみ見れば、値上げ後のEPL放映権喪失ということになる。値上げの理由とした「事業の成長」や「適正価格」との整合性も取れず、DAZNの回答は苦しい弁明に映る。
DAZNは過去、独ブンデスリーガ、仏リーグアン、欧州最高峰の大会「チャンピオンズリーグ」(CL)、「ヨーロッパリーグ」(EL)などの放映権も保有していたが、その後、ブンデスリーガはスカパー、CL・ELはWOWOWがそれぞれ放映権を獲得。これらについて、DAZNはいずれもユーザーに事前に通知することなく放映を打ち切ったため、困惑が広がった。
特に、CL・ELはシーズン途中に放映権を放棄。DAZNからの公式発表がないまま、契約ユーザーが視聴を待ち望む中、朝日新聞がDAZN側に問い合わせる形で放映権喪失が判明したため、DAZN側の対応を疑問視する声が複数出た。過去の「状況により終了してしまうコンテンツもある。その都度、番組表を参照してほしい」とした回答も、批判に拍車を掛けた。
こうした過去の事例と比較すると、今回はシーズン途中に翌シーズンの放映権を保有していないことを認め、公式声明を出している。公式Twitterアカウントでも情報発信するなど周知も強化していた。
DAZNはJリーグの独占放映権に加え、ミクシィとNFT事業を開始するなど多角化を進めているとはいえ、目玉コンテンツを失う可能性があるという事実は変わらない。EPL放映権の確保が、ユーザー数の維持や今後のDAZNの事業展開にとっての分水嶺となる可能性もある。8月の新シーズン開幕まで約4カ月。同社の動向に注目が集まりそうだ。
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