吉野家は、飽和する国内市場でなぜ郊外と女性に目をつけたのか?妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(4/7 ページ)

» 2022年05月11日 07時00分 公開
[妄想する決算ITmedia]

コロナからの回復ははなまるうどんに注目

 実際に吉野家HDの主力事業である(1)吉野家(2)はなまる(3)海外事業の業績の推移は次のようになっています。

  1. 吉野家:売上高1059.7億円(1.3%増) 利益72.7億円(75.5%増)
  2. はなまる:売上高212.6億円(8.5%増) 利益30.4億円の赤字→13.1億円の赤字
  3. 海外:売上高224.9億円(15.2%増) 利益70.9億円(1133.4%増)

 となっていて全事業とも増収ですし、はなまるは赤字続きとなっているものの業績は回復傾向にあります。

厳しい状況が続くはなまる

 各事業の既存店の売上高をコロナ以前の2019年2月期と比べてみると、やはりはなまるうどんが最も厳しい状況です。

  • 吉野家:92.1%
  • はなまる:70.8%
  • 海外(米国):111.6%
  • 海外(中国):90.5%
  • 海外(アセアン):77.0%

 最初にも書きましたがテークアウトが少なく、テレワーク化が進む中で都心部の店舗がオフィスの飲食需要を取れなかったことや、地下店舗も多くコロナ禍で避けられたことが考えられます。

 一方で吉野家事業はコロナ前比で9割という状況だったようです。テークアウトも多く一定の需要は保たれていたようですね。

 また海外では米国に関してはコロナ前を大きく上回るような水準となっています、経済活動の再開も早かったですし、増加するテークアウト需要をうまくとらえたとしています。

 日本でもかなり活動が正常化し始めていますから、業績の大きな悪化が続く「はなまるうどん」は今後の業績回復の余地は大きいです。実際に月次では回復傾向にあり、まん延防止等重点措置などがあったにもかかわらず、直近の第4四半期(21年12月〜22年2月)は19年2月期比で77.4%まで回復しています。今後は、はなまるの業績回復による好業績が見込めそうです。

 とはいえ、一方で経常利益や純利益ベースでは助成金の好影響が減っていきますので、その点から業績悪化となる可能性は高いでしょう。

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