クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

日産SAKURAは軽自動車のゲームチェンジャーになり得るか?(2/3 ページ)

» 2022年05月20日 17時05分 公開
[斎藤健二ITmedia]

20kWhのバッテリー、航続距離180キロ

 航続距離については20kWhのバッテリーを搭載し、WLTCモードで180キロとした。BEVのリーフが40kWhモデルで322キロ、60kWhモデルで450キロなので、軽規格ならではの車体の軽さも相まって容量あたりの走行距離は伸びている。

 180キロという航続距離については「94%のシーンをカバーする」と日産は言う。1日あたりの走行距離は半数以上が30キロ程度なので、日曜の夜に自宅で充電すれば週末までは充電なしで乗れるというのが、日産の論理だ。

 BEVにおける最大のトレードオフはバッテリー容量にある。バッテリー容量を大きくすれば航続距離は長くなるが、価格は高くなる。BEVの普及においての課題の1つは、航続距離が不安というもので、これは統計的な話というよりも心情的な話だ。米テスラは、この点を重視して600キロ以上の航続距離を実現し、高価格帯ながらBEVで最も売れるメーカーとなった。

 これは軽自動車においても同様だ。三菱自動車が2009年に発売した軽BEVの「i-MiEV」は、16kWhの電池を搭載し航続距離は160キロだった。これは現在の燃費計算方式に当てはめると100キロ程度になると見られる。この当時も、日常の足として使う軽自動車ならば100キロ走れば十分というのが、メーカーの論理だった。しかし438万円(税別)という価格の高さとともに、この航続距離の短さもネックとなり、現在は販売を終了している。

 当時と状況が異なる点でいえば、ガソリン価格の高騰とともにガソリンスタンドが地方でどんどん減っていることだ。「ガソリンスタンドに行くのに10キロ、20キロ走らなければいけないという地方が増えている。自宅で充電できる生活様式に変えていくきっかけになるクルマになる」と星野氏は言う。

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