KDDIが「社外副業」ではなく「社内副業」を推進するワケ 経験者が感じたメリットとデメリットは?「もっとこんな制度があればいいのに」(2/3 ページ)

» 2022年05月25日 08時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

2回目は応募者が減少 なぜ?

 20年下期から始まった同制度だが、第1回目は全86業務で募集をかけ、63名が副業に従事した。その後、募集案件と応募者は基本的に増加し、22年度上期の募集案件は約240件に増加した。ただ、募集人員450人に対し応募した人数は225人だったそうだ。副業期間は6カ月間。最長1年までの延期も可能だという。

 「募集案件、応募者ともに増加した後、一時的に減少し、再度増加しました。当初は『社内副業で人材イノベーションを起こす』という使命感や期待値が高かったこともあり、応募する側は、副業先でイノベーションを起こさなければならないのではと、プレッシャーに感じた人もいたようです。それが理由で一時的に募集件数と応募が減少しました。ただ、今は『キャリア形成のツール』という側面を打ち出したこともあり、応募のハードルが下がり再度増加しました」(鈴木氏)

「イノベーションを起こさなくては」というプレッシャーから2回目は応募案件・応募者ともに一時的に減少した(画像:ゲッティイメージズより)

 募集要項は、各部門に任されており書類選考を実施する部門もあれば、特段の基準は設けず、広く受け付ける部門もある。幅広い部門や職種で募集しており、例えば、後半で紹介する副業経験者は、本業は自動車業界担当のシステムエンジニアだが、メタバースのスポーツ中継プロジェクトを副業として選んだ。

 「人事部門でも採用のホームページを作成するプロジェクトで、われわれにはない感性を取り入れるために副業者を募集しました。また、広報部門でも社外向けのリリース作成などで、副業者が活躍しています」(鈴木氏)

課題は40〜50代の応募の少なさ

 応募者の年代は、20〜30代が最も多く7割を超えているという。ただ、50代も8.4%と少なくない数の人が挑戦していて、これまで応募した人材の最高年齢は59歳だった。副業制度は、60歳が上限ということなので、定年間際になってもチャレンジ精神に富んだシニアもいるということだ。ちなみに、定年後の再雇用者は社内副業制度の対象外となる。

 「40〜50代が少ないのは、本業の仕事が成熟期を迎え多忙を極めているという事情もあると思います。その一方で、若手はキャリア形成など、自身の成長へつなげたいという想いを持っている人が多く応募するのでしょう。若手の中には、現状が自分の適性に合致していないためミスマッチ解消の手段として、異動先を模索する目的で利用する人もいるのかもしれませんが、それはそれで一つの考え方だと思います」(鈴木氏)

 定性的な調査を実施していないので、個々の思惑など、断定的なことは言えないとしつつも、キャリアパス形成はもちろん、人材のミスマッチを解消する手段にもなり得る可能性を秘めているということだろう。

 社内副業制度を開始してから、2年が経とうとしているが、課題はあるのだろうか。

 「先ほどお話しした年代の偏りに懸念を感じています。40代、50代のベテランの応募が増え自分たちの経験、専門性などを副業先でシェアする状況が生まれれば、スキルやノウハウの継承が期待できます。幅広い世代に利用してもらうのが理想です」(鈴木氏)

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