KDDIが「社外副業」ではなく「社内副業」を推進するワケ 経験者が感じたメリットとデメリットは?「もっとこんな制度があればいいのに」(3/3 ページ)

» 2022年05月25日 08時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

システムエンジニアが、畑違いのプロジェクトに挑戦

 コネクティッドビジネス本部コネクティッドソリューション部2グループコアスタッフの草生武さんは、自動車業界でネットワークやクラウドインフラのシステムエンジニアとして6年のキャリアを持っている。

 そんな草生さんが副業先に選んだのは、サッカー日本代表の試合を観戦するメタバースイベントのプロジェクトだった。社内副業に関して正直な感想を吐露してもらいたかったので、草生さんへのインタビューは、前出の鈴木氏を初め、人事部門の担当者が離席した形で実施した。

草生さんが副業で関わったメタバースイベント(画像:プレスリリースより)

 草生さんは、学生時代からビジネスコンテストに応募するなど起業マインドを持っていた。副業プロジェクトは当時から興味のあったスポーツに係わることができるというので応募したという。

 「私が本業で担当する業務は、システムとして成熟しており、ある意味ルーティーンを回すことが業務の中心にありました。しかし、副業先に選んだメタバースのプロジェクトは、新規事業なので業務のスピード感が全く異なり、とても勉強になりました」(草生さん)

 副業先では、イベント企画のサポートを担当。規定通り就業時間の内、約2割の時間をメタバースプロジェクトに割いていたというが、1週間後に副業先の仕事に入ると、企画の内容がガラッと変わっていることもあり、兼務の難しさを感じたとこぼした。

 「本業に就いている間も、社内チャットを通して副業の流れは追いかけていたとはいえ、都度、追いつくのは大変でした。ただ、イベントの宣伝企画で私の係わったタスクが成果を出したこともあり、本業では絶対経験できない領域の感性を磨けたと思います」(草生氏)

「もっとこんな制度もあればいいのに」

 2割ルールがあるとはいえ、本業と副業を掛け持ちすることでワークライフバランスが崩れなかったのか心配になる。

 「副業については、上司も含め所属部門全体で理解してもらっています。副業も考慮した形で業務をマネジメントしてくれたので、残業が増えることはありませんでした」(草生さん)

副業先での経験を生かして、本業で新しいチャレンジをと意気込む

 この4月から本業に完全復帰した草生さんだが、副業先での経験を生かして、本業で何らかの新しい挑戦をしていきたいと意気込みを見せる。

 「完全復帰から日が浅いので、具体的なアクションには至っていません。ただ、お客さまとの会話の中で、エンジニアとして新しい提案などを積極的に出していくマインドはさらに強くなったと思います。上司からもお客様との新しいコラボレーション案があれば、どんどん進めろと言われているので、これを機会に提案していくつもりです」(草生さん)

 インタビューの最後に社内副業制度について、草生さんから社員目線での提案があった。

 「次は、社内副業スタートアップのような制度を期待しています。現在でもアイデアソンやコンペのようなものはあるものの、同じ考えを持つ他部署の人が集まって副業的に新規ビジネスを興す仕組みがあればぜひ挑戦してみたいです」(草生さん)

 社内副業という新しい制度が人材面で好循環を生み、社員の成長を促し、ひいては企業の持続可能性を高める一助となるのか。KDDIの挑戦が試金石となっている。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.