適格請求書を交付できるのは、あらかじめ所轄税務署長に申請書を提出して適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者だけです。そして、この登録を受けようとする事業者は、その前提として課税事業者でなければならないとされています。すなわち、免税事業者がもし登録を受けたい場合には、自ら課税事業者を選択しなければなりません。
このことを買手側から見れば、仕入先がインボイス制度の開始後において適格請求書発行事業者にならないのであれば、控除できなくなる消費税相当額分をどうするか、先に述べた対応の検討が必要になるのであり、実質的には、その検討はいま免税事業者である仕入先との取引価格について必要になる可能性が高いということになります。
なお、インボイス制度の開始と同時にこの登録を受けるためには、令和5年(23年)3月31日までに申請書を提出しなければならないこととされています。
ならば、いま免税事業者である仕入先には課税事業者と適格請求書発行事業者になってもらい、取引価格は据え置けばよいと考えるかもしれませんが、ことは、それほど単純ではありません。
免税事業者は消費税を納めていませんが、売り上げに際して消費税相当額を収受しているケースが多く、それはそのまま免税事業者の利益になっています。
この利益を免税事業者の益税と呼ぶことがあり、その是非には議論があるものの、免税事業者はこの益税部分を含めて資金繰りをしているのが実態です。
免税事業者が課税事業者の選択を迫られると、この益税部分の利益を失って経営に行き詰まる可能性があるのです。
免税事業者である仕入先の立場からすれば、適格請求書発行事業者になるのなら、代わりに取引価格を上方改定してもらわなければ事業を継続できません。
もっとも、このような免税事業者の事情に配慮し、インボイス制度の導入から一定期間、適格請求書発行事業者以外からの仕入れについても一定割合の仕入税額控除を認める経過措置が設けられています(図表2)。
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