次に、取引対価の引下げ以外に行われ得るいくつかの行為についても触れています。
具体的には、商品などの買手側が行う以下のような行為は、優越的地位の濫用に当たって独占禁止法上(一定の場合は下請法上・建設業法上)問題になり得ると述べられています。
商品の購入契約後、仕入先が免税事業者であることを理由に、商品の受領を拒否したり、返品すること
取引価格据置きの代わりに、協賛金、販売促進費等の名目での金銭の負担を要請したり、発注内容に含まれていない役務の提供その他経済上の利益の無償提供を要請すること
取引価格据置きの代わりに、当該取引に係る商品・役務以外の商品・役務の購入を要請すること
免税事業者である仕入先に対して、一方的に、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格など著しく低い取引価格を設定し、不当に不利益を与えることとなる場合であって、これに応じない相手方との取引を停止すること
思い通りの価格改定ができないのであれば別の形で、という発想での対応も規制の対象だと考えるのが無難といえるでしょう。
最後に、買手が免税事業者である仕入先に課税事業者になることを要請する行為について述べられています。
このような要請を行うこと自体は問題にならないものの、それに留まらず、課税事業者にならないなら価格を引き下げる、取引を打ち切るといった一方的な通告を行うことは、独占禁止法上または下請法上問題になる可能性があるとされており、注意しなければなりません。
問題になる具体的な場合について、以下のように例示されていることも参考になるでしょう。
特に後者は、免税事業者から課税事業者に転じる仕入先に対して、買手が消費税の価格転嫁の可能性について注意喚起する必要について述べているとも理解できます。仕入先に対して課税事業者になることを要請する際には、消費税の転嫁のための価格改定について同時に説明するなどの対応も求められるかもしれません。
以上、免税事業者を仕入先にもつ企業が、インボイス制度の開始までにとらなければならない対応について確認してきました。
その入り口となるのは、第一に現状把握です。
仕入先のうち、インボイス制度の開始と同時に適格請求書発行事業者になる予定のない事業者を把握しなければなりません。
そのためには、仕入先に対してヒアリングを行うことになるでしょうが、これに先立って、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」では、すでに適格請求書発行事業者の登録申請を終えた事業者の商号などを確認することができます。有効に活用したいところです。
税理士法人峯岸パートナーズ新宿オフィス/公認会計士・税理士
準大手監査法人、大手税理士法人等を経て独立。大手、中小を問わず税務業務一般を支援する。法的思考を基礎に置いた税理士業務・公認会計士業務を行う。
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