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洋上風力に宇宙 清水建設が「非建設」分野を強化する理由は? 井上社長に聞いた激化する競争の先(2/4 ページ)

» 2022年06月10日 08時00分 公開
[中西享ITmedia]

宇宙企業に出資 売上高の海外比率を高める

――宇宙分野への進出も考えて、いくつかの会社に出資もしています。

 1980年代に宇宙開発室を設置し、そのころから月の利用などに目を向けた研究を続けてきました。当時は大型ロケットの時代でしたが、この数年は民間でも小型ロケットを飛ばせるようになってきましたし、衛星から取得した各種データを活用するビジネスも散見されるようになっています。

 そこでキヤノン電子などと一緒にロケット開発会社「スペースワン」を設立し、和歌山県の串本にロケット発射場を建設しました。コロナ禍で少しスケジュールが遅れているものの、遅くとも来年3月までには1号機をここから発射する計画です。

 宇宙関連の事業を形にしていくために、衛星から取得した位置情報データを提供する「シンスペクティブ」という会社や宇宙ごみの回収をする「アストロスケール」にも出資しています。40年近く前に見始めた夢が、夢ではなく現実になりつつあるのです。

月面基地

――海外での売り上げ比率も引き上げる計画のようですね。

 海外で注力している市場は東南アジアで、これまで多くの超高層ビルや地下鉄などを手掛けてきました。地下鉄については、シンガポール、インドネシア、ベトナム、インドで施工実績があります。

 直近ではマニラ地下鉄を施工中で、日本のゼネコンの中ではトップクラスと自負しています。東南アジアの次は、アフリカも可能性があります。現状ではODA(政府開発援助)が中心ですが、将来的には大きなマーケットになる可能性があり、先取りしていきたいと思います。

 ただ、商慣習の違いなど日本国内にはない海外独特のリスクもあるので、そのあたりをよく見極めながら海外比率を高めていきたいと思います。また、直轄にこだわってきた面がある海外の工事を、今後は現地化していかなければなりません。

ジャカルタ地下鉄

――脱炭素に向けた取り組みはどのように進めていますか。

 2050年のカーボンニュートラルに向けて、できることから積極的にやっていくしかありません。政府が目標を決めましたが、エンジンとなるのは民間なので、政府には民間が脱炭素に取り組みやすくなる環境整備を期待しています。

 われわれも微力ながら、水素製造プラントの建設や、二酸化炭素(CO2)を回収するコンクリートの開発などを進めています。消費エネルギーをゼロにする建物「ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)」の普及にも努めていますが、顧客に対してCO2の削減効果と建設に要する費用の関係などを、分かりやすく説明していく必要があります。

 昨春、竣工した当社北陸支店の社屋はZEBになっていて、お客さまを中心に多くの見学者を受け入れています。こうしたものが広がっていけば、日本全体のCO2の排出量削減にもつながります。

北陸支店新社屋

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