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清水建設の井上社長「利益率をより重視」 デジタルゼネコンで「豊作貧乏」を打開3K職場を変える(1/4 ページ)

» 2022年06月09日 05時00分 公開
[中西享ITmedia]

 大規模ビルの建設がめじろおしとなった都心の再開発ラッシュなど、この数年は仕事には恵まれてきたゼネコン業界。

 ただ、コロナ禍の影響により、肝心の利益率が低くなり、「豊作貧乏」の傾向も見えてきた。そうした状況を打開しようとしているのが清水建設の井上和幸社長だ。ポストコロナを見据えながらDXを武器に、利益率をより重視した経営に舵を切ろうとしている。

 井上社長に今後の事業戦略を聞いた。

井上和幸(いのうえ・かずゆき)1981年に清水建設に入社、2013年執行役員、14年常務執行役員、15年取締役・専務執行役員、16年4月から社長。東京都出身。65歳(撮影:河嶌太郎)

人間とロボットのコラボ

――ロシアによるウクライナ侵攻の影響は出ていますか。

 従前から半導体が不足したり、物流コストが上昇するなか、ロシアのウクライナ侵攻による混乱が拍車を掛け、全体的に建設資材の価格が上がってきています。工事利益への影響が懸念されるので、物価を注視する必要があります。

――デジタルゼネコンを標榜(ひょうぼう)しています。これはどういうイメージを描いているのでしょうか。

 デジタルゼネコンには3つの大きな要素があります。1つ目は「現場のモノづくりや管理をデジタル化していく」という考え方。2つ目は「モノづくりの現場を支える周辺業務をデジタル化していく」こと。3つ目は「デジタルな空間、サービスを提供していく」ということです。この3つの要素を総合的に推し進めていこうと考えています。

――建設現場にロボットを積極的に導入しようとしています。その狙いは何ですか。

 発想としては、人間がやっている仕事を全てロボットに置き換えるのではなく、人間とロボットとのコラボレーションの中で、苦渋な作業や繰り返しの単純作業などをロボットに代替させようということです。

 作業の安全性向上や効率化、省人化にもつながり、ヒューマンエラーも減ります。これが現場にロボット導入を進めている理由です。

 建設業は、今も多くの職人が現場で働いている労働集約型の産業です。これからは職人と一緒にロボットも活躍するようになると思います。(建築物や土木構造物のライフサイクルで、そのデータを構築管理するための工程)BIMとのデータ連動のもと、デジタルな管理をベースに最先端のロボットが活躍できるようになってほしいです。

 他産業の工場内の組み立てラインにいるロボットは、同じ場所で同じ作業をしていればいいのですが、建設ロボットは現場で自分の位置を認識して周辺の環境を見ながら移動し、作業しなければなりません。

 ただし、複雑な作業をする建設ロボットの開発には多額の投資が伴います。ですから、単純な作業を代替するロボットを開発し、職人が複雑な作業を担う。こうしたコラボをイメージしています。

――現場にロボットを導入することで、いま使っているマンパワーを、どの程度、削減できますか。

 例えば、鉄骨柱の溶接ロボットは必要な作業員の数を半分に減らせます。資材の搬送ロボットに至っては80%の省人化が可能です。こうしたロボットをもっと増やして、省人化に関するデータを収集していきたいと思います。

Robo-Carrier(搬送ロボット、清水建設提供)
Robo-Welder(溶接ロボット、清水建設提供)
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