都心では再開発が続いている。建設業界にとっては、いまはオフィスの建設が事業の柱となっている一方、コロナ禍によって在宅ワークが増えていて、その需要も近い将来に頭打ちになる可能性がある。
これを見越して清水建設は、洋上風力発電や宇宙といった「非建設」分野の事業を強化し、将来の稼ぐ柱を育てようとしている。
前編【清水建設の井上社長「利益率をより重視」 デジタルゼネコンで「豊作貧乏」を打開】に続き、未来に向けて布石を打とうとする井上和幸社長に、狙いを聞いた。
――中期経営ビジョンでは、本業の建設ではない「非建設」事業の割合を、現在の10%から35%に大幅に伸ばすことにしています。狙いは。
本業の建設事業以外を全て「非建設事業」というくくりにしました。
いま大都市圏では大型の再開発や物流施設、データセンターなど仕事はたくさんあります。当面、底堅い建設需要が見込まれますが、未来永劫続くかというと、そんな保証はありません。
仕事が減って競争が厳しくなると、どうしても建設事業の利益率は低くなるので、非建設業で稼ぐという発想が出てきたのです。
――具体的にはどんな事業ですか?
不動産投資開発、エンジニアリング、まだまだ初期段階ですが施設やインフラの価値を最大化してレベルの高い技術やサービスを提供する「LCV」などの事業量を増やします。それとともに、徐々にですが宇宙開発や海洋開発にも取り組んでいきたいと思います。
投資開発の事例としては、東京の豊洲でやっている大規模開発があります。単に建設するだけでなく、デベロッパーとして自社で投資し、より付加価値の高いものを提供しようとしています。
豊洲ではスマートシティー化に取り組みました。投資開発事業もこれまで苦労してきましたが、一本立ちして利益が出るようになっているので、これを増やしていきたいと思います。
――洋上風力発電施設の施工に使われる船の建造も進めています。いつごろ完成する計画ですか。
建造中のSEP船の完成は今年の10月を予定しています。
当社は、陸上風力発電の施工では業界で一番の実績があり、そのノウハウを生かせる洋上風力発電施設の施工に打って出るために、大型風車を据え付けするためのSEP船を自社で所有することにしました。
SEP船はすでに大型クレーンなどの装着を終え、外観的には完成したように見える段階になっています。規模やクレーンの揚重能力は世界有数です。日本国内だけでなく、海外でもSEP船に活躍してもらおうと考えています。
国内の洋上風力発電の建設マーケットは、EPCの仕事(設計エンジニアリング:Engineering、調達:Procurement、建設:Construction)だけでも5兆円規模になります。このマーケットではトップシェアを取りたいと思います。
現在、洋上風力発電は1基の発電能力は4MW(メガワット)程度ですが、これが10MW超となり、風車が巨大化していきます。
先日、建造中のSEP船を見学しましたが、あまりの大きさに驚きました。わが社のSEP船は15MWの風車を据え付けられる大型クレーンを搭載しているうえ、自航式なので、かなりの競争力があると思い、期待しています。
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