移転プロジェクトは、ProjectC3(チェンジ、コラボレート、クリエイト)と呼ばれ、19年4月に発足。経営層をオーナーとして、人事部を中心にPMOが作られ、本社部室長、従業員有志、社外パートナーなどが連携し、プロジェクトメンバーは計300人。そのメンバーで「ワークプレイス整備」「チェンジマネジメント活動」「引越/文章削減」の3つのサブプロジェクトを推進した。
プロジェクトを始めるにあたり、長い間培われた縦割り構造の働き方から、正反対となるABWに変えていくなかで従業員たちは困惑しなかったのか。高嶋氏は「部室長は、最初困惑した人が多かった」と話す。
「今までは、部下の顔が見えるなかでマネジメントをしてきたのに、今後は顔が見えない全く異なる働き方になる。そうしたなかで部下をマネジメントできるだろうかとの不安を持った部室長が多くいました」(高嶋氏)
そこで注力したのがチェンジマネジメント活動だ。新しいワークプレイス像の明確化・浸透化を目的として、さまざまな取り組みを進めた。
その一つとして、全部室長46人を対象にワークショップや他社見学を実施した。高嶋氏は「研修先の企業では、部室長から最初は同じように困惑したことや、ABWの導入後にどう成果が上がったのかといった話を聞きました。当社部室長にABW導入のイメージを持ってもらうのが狙いです」と当時を振り返る。
そこで培った知見を各部室に持ち帰り、メンバーとともにディスカッション。ビジョンの浸透や課題について部署ごとのニーズを抽出した。
旧本社の1フロアを活用し、移転後のオフィス家具を使ったABWトライアルも実施した。当時、他部署の部員だった前場氏も、トライアルに参加した一人。
「今までは部署ごとに最適化され、物の置き場所や袖机も全て一人一人専用のものがありました。私はモニターの画角を変更していましたが、共有のものはそれが違うので使いづらい。今までのやり方が一般的ではなかったんだと気付くきっかけになりました」(前場氏)
ABWの導入は、社員自身が「本当に必要な持ち物か」を考えるきっかけにもなったという。自席があると、濡れた傘やサンダルといった私物を持ち込んで置きっぱなしにすることがある。同社でも以前はその傾向があったという。
高嶋氏は「例えば、文房具などを共有にすれば、個人で持つ必要はなくなります。それぞれ本当に必要なものは何かを考えてもらい、結果的に個人の荷物はロッカー1個で済むようにしてもらいました」と話す。引越しに伴い文書削減にも取り組み、移転後は78.8%の削減に成功した。
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