第2のパターンは、企業姿勢への信頼感に加えて、企業や商品の掲げる理念や考え方が顧客の共感を生んでいることだ。サントリー(17位)がこのパターンに該当する。同社の「体験価値」の5つの要素を見てみよう。
味の素と同様に、「オープンで正直である」のスコアが最も高いが、それに次いで「私向けのものだと思える」の評価が高くなっている。具体的には、「企業のメッセージや表現が私に合っている」「私の考えや価値観と合っている」といった評価である。このように評価されているサントリーのメッセージとは何か。自由回答を見ると、その内容が見てとれる。
<サントリー>
このように、サントリーは消費者目線、健康、安心な「商品」と、環境問題への取り組みを中心とした「企業姿勢」の両輪で、顧客の支持を得ていることが分かる。同社については好意的なコメントが40代以上の年代に偏っていることも特徴となっており、特に中高年を中心に「自分の価値観に合っている会社」として高い共感を獲得していると考えられる。
第3のパターンは、商品ブランドが企業のイメージをけん引していることだ。アサヒ(21位)、コカ・コーラ(50位)がこれに該当する。
「体験価値」の5つの要素で見ると、食品メーカーに必須ともいえる「オープンで正直である」の指標は高いものの、それ以外の4つの指標は突出して高い項目が見られない。自由回答を見てみよう。
<アサヒ>
<コカ・コーラ>
両社のコメントから、商品が自分に与えているベネフィットが、直接的に企業に対する情緒的な結びつきを生んでいることが分かる。
ここまで、上位50位にランクインした食品メーカーのそれぞれの特徴を見てきた。それぞれの企業が、明確な特徴を持って顧客との絆を作っていることが示されており、どの企業のやり方が一概に優れているはいえない。
ただし、この結果が示す共通点としては、顧客はもはや短期的な商品の味の良し悪しや、利便性などの機能的特徴だけを求めているのではないということだろう。それぞれのブランドが顧客の機能的ニーズを満たすのみにとどまらず、それを通じて、顧客に健康、サステイナビリティ、安心、楽しさなどの情緒的でより根源的な価値を提供しようとしている。それが顧客に実感として伝わり、価値として共感されるところから、顧客と企業の絆作りは始まっていくのである。
インターブランドジャパン シニアディレクター。東京大学経済学部卒業。大手戦略コンサルティングファーム、A.T.カーニーで経営コンサルティングに従事したのち、医療機器メーカー、食品・飲料メーカーなどを経て、2015年よりインターブランドに参画。消費財・ラグジュアリーグッズなどのブランドマネジメントの知見を有し、金融、流通、食品をはじめとする幅広い業界で業務改善や企業再生支援に携わった経験を持つ。インターブランドでは自動車、金融、製造業、飲料をはじめ、多くの分野でブランド戦略策定やブランド管理体制の構築、コミュニケーション戦略支援などに携わっている。また、同社が展開するC Space事業で顧客を起点とした企業戦略について多岐にわたる企業へのアドバイスを行っている。
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