しかし化学合成油にも弱点はある。それは高いだけでなく、添加剤との親和性が低いことだ。そもそもオイル全体の2〜3割は添加剤が占めており、それだけで化学合成油100%ではない、という見方もできる。
そればかりか添加剤をブレンドするために鉱物油に添加剤を溶かしてから混ぜる、という方法を採っているのだから、オイル分だけを考えても100%ではないのが真相なのである。
つまりベースオイルが100%化学合成という何とも曖昧な表現であれば正しいことになるが、それではややこしすぎるので、100%化学合成油という表現に落ち着いているのが現実なのであった。
ともあれ高性能なオイルを最低でも半年に1度は交換するようにすれば、エンジン内部の摩耗はかなり抑えられる。その結果、10万キロを超えても本来のコンディションを維持できているクルマも珍しくない。
日本では乗用車の平均使用年数が13年ほどに伸びているが、欧米ではさらに長く、ベルギー以外はほとんどが日本より長く、15年前後がザラだ。さらにオーストラリアやフィンランドなどは20年を超える。彼らにはタフなクルマを選んでいるだけでなく、適切なメンテナンスを施し、大事に乗り続けている習慣があるのだ。
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。企業向けやシニア向けのドライバー研修事業を行う「ショーファーデプト」でチーフインストラクターも務める。
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