「54歳から管理職」も──“働かない60代”を生ませない、4社の努力改正高齢法の実情(3/3 ページ)

» 2022年08月10日 07時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]
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月10日勤務や半日勤務など選択肢が多い、大手銀行グループ

画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ

 高齢者を含めたダイバーシティーに配慮した、自由度の高い働き方に対するニーズは高い。

 再雇用制度を導入する多くの企業がフルタイム勤務を基軸にしている。しかし、70歳までの就業となると本人の健康状態や家族の事情によりフルタイム勤務が難しい事態も想定される。

 19年10月から定年後再雇用年齢を70歳に引き上げた大手銀行グループは、非正規のパートタイマー社員も含めて働き方の選択肢を6つ用意している。フルタイム以外に月10日勤務や半日勤務などのパターンを設け、本人の希望で選択できる。実際に家族の介護でデイサービスの送迎をしている社員が半日勤務を選択するケースや月10日勤務を選択する女性社員も多くいる。

 また、大手不動産管理業では65歳定年制度を導入しているが、従来の再雇用制度も存続し、本人の希望でいずれかを選べるようにしている。業種の特性から勤務場所は本社・支社以外にマンション、ビル、商業施設など物件ごとに点在している。勤務形態も早朝から深夜まであり、管理コード上は300パターンもあるという。定年延長社員はフルタイム勤務が原則だが、再雇用社員の働き方は勤務先と話し合い、隔日勤務の週3日勤務や1日5時間の短時間勤務の社員もいるなど柔軟な運用を行っている。

企業に求められる対策は

 高齢社員の増加にとどまらず、新卒人材や女性の人材の確保と定着の観点から働き方の多様化のニーズがこれからも高まっていくことは間違いない。折しもコロナ禍の在宅勤務中心の働き方に変わる中で時間と場所に縛られない自由度の高い働き方が浸透しつつある。

 人口減少下の中で企業の発展と持続的成長を図るためには、人材活用の在り方を考え、自社に最適な70歳就業システムの構築を急ぐべきだろう。

著者プロフィール

溝上憲文(みぞうえ のりふみ)

ジャーナリスト。1958年生まれ。明治大学政治経済学部卒業。月刊誌、週刊誌記者などを経て独立。新聞、雑誌などで経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。『非情の常時リストラ』で日本労働ペンクラブ賞受賞。


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