「54歳から管理職」も──“働かない60代”を生ませない、4社の努力改正高齢法の実情(1/3 ページ)

» 2022年08月10日 07時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]

 少子化が加速し、新卒人材の確保に限界が生じつつある。即戦力の中途人材も争奪戦が繰り広げられ、必要人員の確保が難しい状況にある。生産年齢人口が減少する中で、企業の持続的成長を維持するためには、中・高齢のベテラン社員の積極的活用を図る必要がある。

 しかし、これまでの連載で指摘したように、ベテラン社員の活用にはモチベーションの低下やスキルの陳腐化などの問題が多くある。改正高年齢者雇用安定法が求める70歳までの就業確保措置にとどまらず、60歳以降の社員の処遇制度改革は必須といえよう。

生産年齢人口が減り、ベテラン社員の活用が重要に(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 企業がベテラン社員を重要な戦力にするために、改革すべきポイントは大きく以下の3つだろう。

  • (1)人事・処遇制度の再構築

  • (2)キャリア教育と、能力・スキル開発の推進

  • (3)自由度の高い、柔軟な働き方の構築

 以下に、これら3つを実践している企業の事例を紹介しよう。

60〜65歳の給料を引き上げた、大手部品メーカー

画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ

 再雇用制度を長く続けてきた大手部品メーカーは、2017年4月に定年年齢を60歳から65歳に引き上げるとともに賃金制度を改革した。労働力の確保はもちろん、経験・知識・人脈の継承や職人の技術発揮を期待した改革だ。

 一般職については、給与を下げることなく60歳以前と同じ100%を支給。管理職層については役職定年の58歳には役職手当がなくなるが、60歳以降の給与については、60歳まで2年間、半期ごとの計4回の人事評価を基準に処遇を決定する。評価が低い人でも60歳以前の給与の70%、高い人は100%となり、平均で85%になるように設計したという。

 当然、全体の人件費は増えるが、人件費を抑制する手段として(1)50歳以降の給与は下げずに毎年の昇給の配分を抑制、(2)企業年金の一部を減額、(3)定年が5年延びることで企業年金支給の資産が少なくて済むというメリットを活用──という3つの施策を実施した。もちろんそれだけでは増加分をカバーできないが、社員の活躍に期待して人件費を増額した。

 65歳まで定年を延長し、給与を引き上げてモチベーションを維持する方針だ。

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