DX人材の求人に既存社員が「高すぎる!」 反発を防ぐには、どうすればいいのかQ&A 総務・人事の相談所(2/3 ページ)

» 2022年08月29日 07時00分 公開
[神田靖美ITmedia]

DX人材の賃金は、どう決めるべきか

photo 画像はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 野口悠紀雄・一橋大学名誉教授は、米商務省の統計で「情報・データ処理サービス」部門がグーグル、アップル、メタ、マイクロソフト(つまりアマゾンを除く”GAFA+M”)の雇用者であると推測しています(『日本が先進国から脱落する日』プレジデント社、22年)。

 そうだとすれば、情報・データ処理サービス部門こそが典型的なDX産業ということになります。日本にはGAFA+Mに相当する産業はなく、情報・データ処理サービスに相当する産業分類もありません。従って日本のDX人材の賃金相場は、アメリカの「情報・データ処理サービス」を参考にして推定するしかありません。

 まず米国の情報・データ処理サービス部門の、20年の一人当たり賃金は約18万ドルです。これを1ドル=135円で日本円に換算すると約2400万円になります。

 次に18万ドルはアメリカの全産業の平均賃金の2.6倍です。厚生労働省の『賃金構造基本統計調査』によると、21年の日本の全産業の平均賃金(正社員、賞与・残業代も含む)は約490万円です。これの2.6倍は1274万円です。

 これらの事実を参考にすると、日本でDX人材を獲得するためには1300万円から2400万円はかかると考えるべきです。

モチベーションの要因は賃金よりも……?

 もちろん賃金だけが仕事の魅力ではありません。これはDX人材の話ではありませんが、スタンフォード大学の心理学者チップ・ハースがシカゴ大学のMBAを対象に実施した調査によると、人々の3大モチベーションは「新しいことを学ぶ」「スキルを開発する」「自分に自信を持つ」でした。「報酬」は4番目です。DX人材を対象に行っても、おそらくこれと大差ない結果が出ることでしょう。

 日本は現状、残念ながらDX後進国です。3大モチベーションの観点での魅力は欧米や中国の企業に劣る可能性があります。そうだとすれば、報酬の面でより魅力的な条件を示す必要があります。

 経済団体連合会と東京経営者協会がまとめた『新規学卒者決定初任給調査』によると、21年度の「大学院卒・技術系」の初任給は23万8219円です。「大学卒・事務系」に比べて約1万9000円の差しかありません。専門性を評価しているというより、年齢を考慮している程度の差にすぎないと見るべきでしょう。このような伝統的な賃金制度でDX人材を獲得することは困難です。

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