DX人材の求人に既存社員が「高すぎる!」 反発を防ぐには、どうすればいいのかQ&A 総務・人事の相談所(3/3 ページ)

» 2022年08月29日 07時00分 公開
[神田靖美ITmedia]
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社内の不満を鎮めるには

 しかしいかにDX人材といっても、いきなり外部から連れてきて、既存社員を大きく上回る賃金を払うというのでは、社内で不満が起きても不思議でありません。この問題の解決策としては、まず求人広告を出す前に社内で公募することです。そうすればチャンスを平等に与えたことになり、不公平といわれる理由はありません。もちろん、不合格であっても解雇などする必要はありません。

 人材は社外から招聘(しょうへい)するより、できるだけ社内で登用する方が効率的です。ハイパフォーマンス・ワーキングプラクティシズ(HPWP)といわれるものがあります。「高業績労働慣行群」とでも訳すべきでしょうか。14の慣行からなり、1990年代にアメリカで行われた調査では、これらを数多く実行している企業ほど売上高も利益も高く、離職率が低いことが明らかになっています。そのHPWPの1つに「職務のうち、外部からの採用ではなく、内部の昇進で埋められた割合」ということがあります。

 また、同じ社員だと思うから不公平に思えるのであって、嘱託なり契約社員なり、正社員とは雇用形態を別にして、就業規則も給与規定も正社員とは別のものを適用すれば、不公平ではなくなります。

 日本企業で一般的な、ある意味外部とは隔絶して、「わが社の賃金制度ではこうなる」という論理だけで賃金を決める方法を「組織型賃金決定」といいます。これに対して、むしろ外部と一体化して「この仕事の賃金の世間相場はこのくらいだ」という基準で賃金を決める方法を「マーケット型賃金決定」といいます。日本でも高度な専門職の間では、マーケット型の賃金決定が徐々に広がってゆくものと思われます。

著者紹介:神田靖美

人事評価専門のコンサルティング会社・リザルト株式会社代表取締役。企業に対してパフォーマンスマネジメントやインセンティブなど、さまざまな評価手法の導入と運用をサポート。執筆活動も精力的に展開し、著書に『スリーステップ式だから、成果主義賃金を正しく導入する本』(あさ出版)、『会社の法務・総務・人事のしごと事典』(共著、日本実業出版社)、『賃金事典』(共著、労働調査会)など。Webマガジンや新聞、雑誌に出稿多数。上智大学経済学部卒業、早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了。MBA、日本賃金学会会員、埼玉県職業能力開発協会講師。1961年生まれ。趣味は東南アジア旅行。ホテルも予約せず、ボストンバッグ一つ提げてふらっと出掛ける。

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