A: できません。民法改正によって、身元保証人が負担する損害賠償額の限度額を定める必要があります。
20年4月1日施行の改正民法により、個人を保証人とする根保証契約全般について、極度額の定めが必要となりました(民法465条の2第1項)。極度額とは、責任を負う上限となる限度額をいい、極度額の定めのない個人根保証契約は無効となります(同法465条の2第2項)。
根保証契約とは、継続的な取引から生じる不特定の債務を保証する保証契約を意味します。
例えば、銀行から100万円の借入れをする場合に、それを保証する場合は普通の保証契約です。これに対して、銀行から継続的に借入れをする場合に、借入れの都度保証するのは煩雑なので、将来における銀行からの借入れ(不特定)についてはまとめて保証します、というのが根保証契約です。
不特定の債務を保証しますので、保証人としては想定外の借金を保証することになるリスクがあります。そこで、あらかじめ根保証契約で保証する限度額を設定し、その枠内に限り保証します、というのが極度額です。
例えば、あらかじめ500万円という極度額を定めておけば、借入れが繰り返されて総額500万円を超える場合になっても、保証人の責任は500万円に限定されます。想定外に多額の保証責任を負わないで済むのです。
身元保証契約は、従業員が将来会社に対して負担する不特定の債務を保証するものですので、根保証契約の一種といえ、極度額の定めが必要となります。
A: あります。使用者は、社員に業務上不適任または不誠実な行為がある場合、あるいは任務、任地の変更など、身元保証人の責任に影響を及ぼす場合は、これを身元保証人に通知しなければなりません(身元保証法3条)。
さらに、20年4月1日施行の改正民法により、主債務(身元保証契約における従業員本人)の履行状況に関する情報提供義務が新設されました(民法458条の2、458条の3)。
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本および主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無ならびにこれらの残額およびそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければなりません(民法458条の2)。
また、主債務者が期限の利益を喪失した場合、債権者は保証人に対して、期限の利益喪失を知ってから2カ月以内に通知をしなければならなくなりました(458条の3)。
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