新機種では指紋認証「Touch ID」(タッチID)の動向も注目点の1つだ。13年9月発売の「iPhone 5s」で初搭載され、「iPhone 8」までPCを含めたアップル製端末での導入が進んだ。セキュリティ向上とともにiPhoneでの決済時などでパスワード入力が不要となるなど利便性が高い機能だったが、「iPhone X」(17年11月発売)以降はiPhoneシリーズでホームボタンが廃止となり、認証機能がタッチIDから顔認証の「Face ID」に移行した。
だが、コロナ禍でマスク生活が国内外で定着。アップルはマスクを着用した状態でも認証できるようOSをアップデートしたが、再び指紋認証搭載へのニーズが高まっている。
現行のiPhoneシリーズの主力機ではタッチID搭載は「iPhone SE」(第3世代)のみとなっている一方、中古スマホを販売するムスビーが発表している最新の中古スマホ人気ランキングでは、1位が「iPhone SE」(第2世代)で、4位までをタッチID搭載機種が占めた。
一見するとタッチIDの人気が高いように見えるが、中古携帯電話を中心としたデバイスの売買、レンタルを個人・法人に展開するニューズドテック(旧:携帯市場) マーケティング部部長の冨永潤一氏は、指紋センサーの有無は「(人気の)要因としては小さい。人気の要因は最新OSにアップデートできること」との見解を示している。
タッチIDにはiPhoneの歴代モデルのようにホームボタンに搭載するパターンに加え、「iPad Pro」「iPad Air」のように端末上部の電源ボタンに搭載するパターン(「iPad mini」も最新機種で搭載)もある。
「Galaxy」シリーズを手掛ける韓国サムスン電子など競合他社は、ディスプレイ内に指紋センサーを搭載する機種を製品化している。アップルもディスプレイ内蔵の光学式指紋センサーの特許を米国内で申請しており、実用化が期待されているものの、現時点で有力な情報は出ていない。
前述のMing-Chi Kuo氏も「2024年までタッチIDは採用されない」と投稿しており、この予測が正しければ、iPhoneでのタッチID復活は最短でも25年以降の機種とみられる。
公式サイトの記述からも、タッチID搭載の可能性が低いことを示す片鱗が見て取れる。公式WebサイトでアップルはFace IDについて「無作為に選ばれた他人がiPhoneまたはiPad Proを見て、Face IDで本体のロックを解除できてしまう確率は、マスクを着用していてもいなくても、容姿が1つだけ登録されている場合、100万分の1未満」と指摘している。
一方タッチIDについては「指紋には一つとして同じものはないため、別々の指紋が、たとえそのごく一部同士であっても酷似していて、Touch IDに同一指紋として登録されることはまれ」とした上で「こうしたことが起きる確率は、登録される指紋1つにつき、わずか5万分の1」と紹介している。
つまり、タッチIDを搭載することで、端末のセキュリティレベルが低下する可能性を示唆しているのだ。開発側の視点からみても、廉価モデルのiPhone SEを除く次世代iPhoneに、タッチIDが搭載される可能性は低いとみるのが現実的だろう。
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