本当に優秀な人は、実は採用市場に出てこない──では、どう採用するか?DX人材がいない!(4/4 ページ)

» 2022年09月26日 07時00分 公開
[大谷昌継ITmedia]
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長期的な関係構築:ゆるいつながりを維持する

 カジュアル面談の実施後に、企業側は選考に進んでほしいと考えても、候補者はそこまで志望度が高くないということはよくあります。DX人材は貴重なため、どの企業にも大事にされており、「現職に大きな不満はないので、転職する理由がない」という状態になることが多いのです。

 また、お互いに良いと思った場合でも候補者が現職でのプロジェクトに関わっていて、現在募集しているポジションの入社日に転職できなくて断られることもあります。 選考に進んでから辞退され、他社に入社されてしまうケースも少なくありません。

 しかし、その時点で選考や採用につなげることはできなくても、諦めてはいけません。DX人材のように競争率の高い要件の人材は、そもそも出会うことが難しいという前提があります。自社とマッチする人と一度でも接触できたことは、会社にとって資産です。ここでタレントプールという考え方が発生します。

 タレントプールとは、接触のあった候補者を個別にリスト化し、カルチャーフィット(自社文化とのマッチやビジョン共感)、スキルセット、転職意向度などの情報を記録し、この中から自社にマッチする人材にアプローチするという手法です。

 タレントプールを活用する際には、個人情報の管理には気を付けましょう。事前に採用目的に利用する旨を伝え、個人情報に該当するような情報は収集せずコンタクトが取れる状態だけを保つのが、リスクの低いやり方です。

 このリストを参照しながら、現在募集しているポジションに合う人材はいないか、最近連絡できていない候補者がいないかをチェックして、人事担当者または現場社員が連絡を入れていきます。自社の最近注力している分野の記事をシェアしてみたり、ランチを食べに行ってお互いの情報をアップデートしたりする、緩いつながりを維持するのが目的です。

 それまで自社に来てくれる様子がなかった人でも、現職の人事異動などで状況が変わり、転職を考えることもあります。転職時に「あの会社があったな」と想起される企業であるためには、過去に接触した人たちに「今の自社で、何ができるのか」を随時アップデートして伝えていく必要があります。それほどに、現在の人材獲得競争は激しいのです。

 本稿でご紹介したのは、実行したからといって直ちに内定者が出るような施策ではありません。しかし、候補者はエージェントから紹介を受ける際、SNSやブログの情報発信をチェックするでしょうし、カジュアル面談によって選考に進みたいと思う人は増えることでしょう。

 候補者の視点を持って、いかに興味を持ってもらい一緒に働きたいと思うかを考え抜いた企業が、競争の激しい採用市場で成功しています。全てを今から行わなくてもよいので、視点を変えて見直してみることをおすすめします。

著者:大谷昌継 ウォンテッドリー株式会社人事責任者

1974年生まれ 東京都出身。東京大学経済学部経営学科卒業。

新卒でソフトバンク株式会社に入社後、2001年オイシックス株式会社に入社。物流責任者として基礎を作ったのち、2005年から人事を担当。2014年にウォンテッドリー株式会社に人事責任者として入社。二度の東証マザーズ上場を行い、現在採用から労務、人事制度など人事全般を業務としている。

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