クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

新型クラウンの“仕上がり”はどうなのか、チェックした池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/6 ページ)

» 2022年10月11日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 さて、10月10日掲載の記事で、新型クラウンが一体なぜ、大変貌を遂げたのかを解説した。いずれにせよセダンはもうこれまでの延長では生き残れないことをご理解いただいたものと思う。

 そもそもセダンという車型は、クルマに求めるさまざまな要素の最大公約数として存在したマルチロール車である。4人の人と荷物が積めて、かつ高い運動性能を求める欲張りなニーズに応えるもの。

 しかしながら時代を下るに従って、その要求レベルが高くなり、個別要素に特化したシングルパーパス車が増えてきた。スペースに特化したミニバンがあり、それより少し運動性を高めたSUVがある。あるいはわが国のスポーツセダンの代表車種とも言える日産スカイラインGT-Rは、32型、33型では一応スポーツセダンの枠組みを守っていたものの、34型でセダンの枠を踏み外し、スカイラインの名を捨てた35型では、もはやセダンと呼ぶわけにはいかないクルマになった。

 それぞれ特化した方向に出口を見つけていき、そうした中でクラウンだけが“八方美人”を保っていくことが難しくなったわけだ。

 だから4つの車型を用意した。誰にでも合わせると中途半端にしかならないので、マルチロール性と言えども、少しずつ振り幅を付けて、それぞれが、マルチロールの方向性に濃淡をつけた形である。その中で最も中心商品となるのが今回のクラウン・クロスオーバーであり、他に違う振り幅を持つスポーツ、セダン、エステートが展開される。

新型クラウンは4つの車型を用意(撮影:三橋仁明/N-RAK PHOTO AGENCY)

 セダンの本質通り、マルチロール性を最も高めたモデルがクラウン・クロスオーバーである。以後2年の間に他のバリエーションが順次追加されていく。セダンに求められるフォーマルさと高運動性能を求めるクラウン・セダン。米国を中心にSUVクーペのスタイルを押し出すクラウン・スポーツ。そしてライフスタイル派に向けた積載性能重視を担うのがクラウン・エステートとなる。

 今回のクラウン・クロスオーバーに関して言えば、先代のFR用GA-Lプラットフォームから、GA-Kプラットフォームへとベースシャーシが改められた。レクサスLSとも共通だったGA-Lから、カムリ用に開発されたGA-Kと言われると、格落ち感はやはりないではないのだが、いろいろ考えると腑に落ちる部分は多い。

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