クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

新型クラウンの“仕上がり”はどうなのか、チェックした池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)

» 2022年10月11日 08時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

インテリアで気になったところ

 さて、インテリアである。15代目で一番気になったのはここで、途中マイナーチェンジでテコ入れされたものの、線の要素が放埒(ほうらつ)なまま整理されておらず、オーナーが毎日最も目に入れる景色としてなかなか厳しいものがあった。遠慮なく言えばカッコ悪く、クルマ1台としてみたときに大きな減点要素となった。そういう部分がクラウン・クロスオーバーでは払拭された。

 感動するほど素晴らしいデザインとまでは思わないが、ほとんど嫌なところがない。押し出し感や主張の強いデザインではないが、控え目で穏やかで、適度にスタイリッシュな良い落としどころだと思う。何もインテリアがこれ見よがしである必要はないと思う。そっちは外観で十分にやってあるので、クドくならず、飽きないことは、毎日見る部分のデザインとしては割と重要だと思う。

先代クラウンのインパネ
新型クラウンのインパネ。控え目で穏やかで、適度にスタイリッシュに仕上げた

 多少引っかかるのは、ステアリングのセンターパッドとボタン回りのデザインで、ここだけ先代にも似たごちゃつき感が残っている。ここを他のデザインくらい控え目にしたらもっと良かったと思う。とはいえ、ステアリングの、特にボタン類はあまり車種ごとの専用デザインにし難い部分なので、手出しができなかったという社内的な理由もあったのだろうとは推測する。ただし、それはトヨタの都合でユーザーには関係ない。

ステアリングのデザインで気になるところも

 走り出しのマナーは良い。そこは最初から不安がなかった。今回の試乗に供(きょう)されたパワートレインは、トヨタのベストパワートレインでもある2.5リッターのハイブリッドA25A-FXSだ。発進から加速、巡航まで静かで力強く、恐らくこのサイズのクルマを実燃費でリッター20キロ近くで走らせるだろう。このあたりはいずれ長距離を実際に走って確認してみたい。

 直進安定性は良好。自然に真っ直ぐ走る。これはほぼ最上級の褒め言葉である。コーナーリングはしっかり連続したキレイな姿勢でこなし、乗り心地とのバランスもさすがはクラウンというところで文句なし。

 リヤシートの広さは先代とは隔絶している。トルソアングルは若干寝ている気がするが、座面の前上がり角がキチンと付けられているので、全く問題ない。むしろ少し寝かせたトルソアングルによって、後席パッセンジャーの頭部が後ろに下がって、室内の広さ感が強調されている。後席居住性は文句なしである。

リアシートは広い

 特筆すべきは、後席のサイドウィンドーからの景色の新しさだ。着座姿勢での視野を邪魔するものが極めて少ない。ルーフラインは高い位置を通るし、ピラーによって真横の視界も邪魔されにくい。古典的なサルーンの定石は、Cピラーによって、リヤシートのパッセンジャーの顔を外部の視線から隠すものとされてきており、伝統的なお作法なのだが、クラウン・クロスオーバーでは、それを敢然(かんぜん)と無視して、クリーンな視界を用意した。

 まあそこまでの貴賓(きひん)が乗るわけでもあるまい。長距離ドライブで風光明媚な所を走ったとき、そこから見える景色は明らかにこれまでと違うだろう。ぜひ、そういう場所を後席で味わってみたいと思う。

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